ひきつづき全日本ベテランテニスへの出場を夢見てるけれど、一旦スクラッチから再挑戦しようと考えを改めた男の話②

 『夢見る少女じゃいられない』と肩肘を張るのは、自意識過剰な気がする。休まず、笑わず、はいつくばって探すのもしんどいから、ただただ『夢の中へ行ってみたい』と望めばいいではないか、と思う。

 ふとしたきっかけでJOPベテランのシングルスに出場をはじめた男も、「走れない、持久力もない、筋力もない、柔軟性も足りない、作戦もない、自信もない、勝とうという気持ちの強さもない」と、確信をもって自身を評価するに至ったけれども、「全日本ベテランテニスに出場してみたい!」という夢を諦める気は毛頭ない。「そんな大それた夢を見るなんて大人気ない。」とか、「今の実力を認めようとしないで格好悪い。」とか言う人がいるかも、なんて心配も毛ほどもしていない。そんなことを言うのは今現在テニスをしていないオジサンやオバサンだけな気がするし、現在進行形でプレーしている人の反応は、無関心の「へえ」か、ニュートラル・トゥ・ポジティブの「へえ」のどちらかだろうと予想されるからだ。

 好きな夢を持ち続けるのは、自分以外に一切迷惑をかけない限りにおいて、個人の勝手である。

 と言うことで、一旦スクラッチから再挑戦しようと考える男は諦めていない。しかし、なんでこうなったか、という事実の整理は必要だろう。再挑戦にあたって。元々、その男は、サーブとスマッシュとボレーが得意だった。そして上手な人が褒めてくれるのは、フラット気味のフォアハンド・ストロークと、ツボにハマった時のバックハンド・ストロークだった。当時の男のグリップは、薄かった。

 そして、男は試合に出始めた。その男は、試合のプレッシャで、何もできなかった。正確に言うと、強烈なサーブでエースを取ることはあったし、サーブ・アンド・ボレーが決まったり、強烈なフォアハンド・ストロークがポイントに繋がることもわずかだがあった。しかし、プレッシャによる緊張で、リターンは入らず、ストロークもアウトすることが大半だったので、相手はただ返球するだけで男に容易に勝つことができたのだ。

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