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陽口 <かっこいい大人へ>

 はたちになった。二十歳は、世間一般では「大人」というらしい。でも、私は自分が大人になったとはなかなか思えない。いまだにおなかを出して寝ちゃうし、早起きは苦手だし、スーパーではすぐにひとりで先におかし売り場に行ってしまう。う~ん、大人とはいえないなあ……。


 私が大人になれていないことは置いておき、私は昔、大人になるのが不安なときがあった。そのときはまだ高校生で若かったけれど、それでも十分人生に絶望していた。この先生きていてもなんにもいいことなんかない。高校生のいまでさえこんなにつらいのだから、大人になったらもっと人生しんどいに違いない。そう思っていた。


 でも、私の周りにはそんな将来の不安をなくしてくれる大人がたくさんいた。


 私の通っていた高校は先生どうしの仲がよく、いつも笑って話をしていた。薄給だと嘆いたりもしていたけれど、「こんな大人になりたくない」と思ったことは一度もなかった。短歌のワークショップで出会った大人も、仕事が忙しそうだったり、頭のおかしい上司がいる!とか怒ったりしていて、大変だなあとは思うものの、短歌という趣味で集まって盛り上がれるし、お酒飲んで恋バナして、とても楽しそうだった。他にも、お金はないけれど夢に向かって頑張ってるとか、高校・大学時代のつらい話を今だから笑って話してくれる人など、私の周りにはたくさんの素敵な大人がいて、その人たちに会うたびに、大人になる不安は薄れていった。むしろ、いろんな大人が私のなかで「こんな大人になりたい」になっていった。


 もし大人が、子どもに「大人っていいぞ」「歳を重ねることは悪いことじゃないぞ」と思わせたいなら、大人がかっこいい姿でいることがなによりも大切だと、実体験から思う。


 私も、かっこいい大人になりたい。

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