声とジェンダーの話
こんにちは。あすぺるがーるです。
先月の紅白に、人気音楽トーク番組の「おげんさんといっしょ」のキャストが出演し、大きな話題になりました。
『おげんさんといっしょ』は、NHK総合テレビで2017年5月4日及び2018年8月20日に星野源の初冠番組として生放送された音楽番組。
星野が「おげんさん」(お母さん役)に扮し、東京・渋谷にあるおげんさんの家にて、おげんさんとその家族に扮した出演者による生演奏やセッションをしたり、音楽について語る番組。進行は「おげんさんちのねずみ」(声:宮野真守)。おげんさんといっしょ
このときのオープニングトークの星野源さんの発言が、大きな議論を呼んでいます。
紅白歌合戦の組分けシステム
歌の前におげんさんとねずみが、こんなトークを交わしていました。
🐭 「おげんさんて、白組と紅組、どっちなの?」
👩 「どっちなんだろう。おげんさんは男でも女でもないから...」
えっ、どういうこと!?
「紅白歌合戦の組み分けは『男性は白、女性は紅』となっている」
本当なんでしょうか?
ちょっと調べてみましょう。
*** 過去3年分の出演歌手一覧 ***
*** ここまで ***
本当だ…今まで見てて全然気づかなかった…!
いや、この組分けシステム、どうなの?
おげんさんは演技だからまだしも、本当に性別曖昧な出演歌手さん、むっちゃ困るやん…
そもそも、声の世界に性別二元論は通用しないも同然です。
「男/女セイ合唱」の「セイ」の字は
「本日は、ダンセイ合唱団○○ 第✕回演奏会にご来場いただきまして、誠にありがとうございます」
この場内アナウンスを聞いたとき、あなたは「ダンセイ」の部分に、何という文字を当てはめますか?
これ「男性」ではないんです、実は。
「ジョセイ合唱」も…
紛らわしいですね。
なぜこのような呼び方をするのでしょうか?
それは簡単に言うと、男性でも女声で歌う人がいて、女性でも男声で歌う人がいるからなんです。
ソプラノもアルトも男だった
ミサや賛美歌を聞いたことがありますか?
クリスチャンの方やミッション・スクールの学生にとっては毎週恒例のことですが、そうでない方が聞く機会は少ないかもしれませんね。
ミサはキリスト教誕生のころから、礼拝を行う度に歌われ続けている曲です。
しかしかつて、ミサが女性によって歌われることはありませんでした。
中世のヨーロッパにおいては「女性は教会では黙すべし」という掟により、女性が教会や舞台の上で歌うことは禁じられていた。
そこで、教会の聖歌隊では高音のパートつまり、ソプラノとアルトを、ボーイソプラノが担当していた。
しかし、表現力に乏しく響きの弱いボーイソプラノのかわりに、アルトは成人した男性がファルセットを使って歌うようになった。カウンターテナー - Wikipedia
現在のクラシックではソプラノ・アルトは女声の区分ですが、当初は違ったのです。
性別をまたぐ声域の人もいる
女声の歌える男声が女声として女性に混じって歌うことは、そんなに珍しいことではありません。
合唱曲の声部は、しばし流動的です。
アルトより高音が出ればソプラノで、ベースより高音が出ればテナーなのです。
そのためテノールでも特に高い声域の人は、自分の歌える声域や希望に応じて女声と男声を行ったり来たりします。
女声でも、ごく稀ながら同様のことがあります。
女声→男声は声帯の長さを必要とするため、男声の例に比べるとかなり少なくなりますが…
声に性別などない
声は本来、性別によって区分されるものではありません。
男性は思春期に声帯が著しく伸びる遺伝的仕様で、声帯が長いと声が低くなるため、相対的に女性より声が低くなります。
男性の声変わりは身体への負担も大きく、上手くいかないと声が不安定になってしまうこともあります。(変声障害)
その他にも、本人の身体的要素や精神状態、そのときどきの環境要因など、様々な要素が絡まりあうことで声は形づくられます。
声は、性別二元論で切り分けるには、あまりに複雑で繊細なものなのです。
そして、声から受ける性的印象とその他の性的要素によって声や歌や個人が貶められることは、あってはならないことだと思います。
おげんさんこと星野源さんは、オープニングトークをこう締めくくっています。
👩 「思ったのは、紅白もこれからね、紅組も白組も性別関係なく、混合チームでいけばいいと思う」
本当それ。激しく同意。
紅白歌合戦は、開始した1951年当初は「男女平等」を表現するものでした。
しかし現代ではもう、男女平等の理念は新しいものでも何でもありません。
男性と女性以外の性別の人の存在が当たり前にならなくてはいけないのです。
どうする、NHK?
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