クビキリヒメ
電子配信が広まり、同人のみならず商業でも読み切りや短期連載のハードルが下がった。
音楽で言うところのインディーズデビューというステージが明確にマンガ界にも生まれたようなものであるからにして、新人作家は特にチャンスに恵まれている時代なのではなかろうか。
現在の勤め先の年配の編集長も「仕事を選ばなければマンガで食って行くだけなら容易い」と飲み会で話していたのを思い出す。
画力だったりマンガの作り方だったりはやはり商業で経験を積んだ作家の作品の方がクオリティーは高いのだが、やはりビジネスの色に染まっていない作品の方が(興味深いという意味での)面白い作品や斬新な作品が多く、僕はインディーズ系が結構好きだったりする。
「クビキリヒメ」はLINEマンガのインディーズ作品として連載されていた。
LINEマンガのオリジナル作品はやはりWebtoonが多いというのもあってあまり好みのものは多くないのだが、「クビキリヒメ」はなかなか良いと思ったのだ。
タイトルと表紙を見たとき、流行りのジャンルから考えると没落令嬢が逆転するか、アクションなら「CLAYMORE」のような作品か……と思ったのだが、1話を読んでみれば没落令嬢の話ではあるが、処刑人として第二の人生を歩むというのは面白いと思い、話数が少ないことも相まって読むことにした。
同人・インディーズはやはり如何に導入が惹き込まれるかである。
短編としてのまとまりは良くて、革命による没落・首切役として生き残る・先輩役人の生い立ちを知る・お互いの関係性と生い立ちを比較する・そして故有って跡を継ぐというシンプルかつ綺麗な纏まり方をしている。
処刑というものは現代日本に生きる我々には一切関わりのない御伽噺であるから、リアルかフィクションか分からないからこそ設定や物語に邪念なく読み進められた。
しかし、一方で死刑制度は現代日本にもある訳で、そして誰かがその役目を負っている。
日本の絞首刑は確か数人がいっせいにボタンを押すことで誰が「トドメ」を刺したのか分からなくしていると聞いたことがあるが、きっとそれくらい人を殺めるということはたとえ対象が極悪人であっても常識的な感性を持つ人間にとって強いストレスなのだろうと思う。
しかし、革命による貴族の処刑というのは必ずしも悪事を働いていたとは限らず、胡座をかいていたとしても貴族の子供には何の影響力もなかったハズで、そういった子供でも容赦なく処刑するというのだから、きっと日本の死刑執行なんかよりもストレスは強いだろう。
まぁ、どちらにしろ殺生はしないで生きていきたいので、そのストレスを知らない幸せを一先ずは喜びたい。
市民の憎しみの度合いも知る由はないのだが、作品の(主人公から見た)悪役は市民からみても少し行き過ぎた正義というか、悪に対してはどれだけの悪をぶつけても構わないような素振りがある。
再度正義と悪は入れ替わる物語なのか、そしてタイトル通り首切姫となった主人公がどうその余生を過ごすのか、大変続きが気になったことがインディーズ作品ながら少し記憶に残って記事の題材にに選んだ次第である。
尤も、LINEマンガというプラットフォームでの売れ筋ではないので、続編制作の線は無いだろう。
読んだことないけどこれ系が筋なのはウルジャンとか?