あの胸にもういちど
先日、フランス俳優のアラン=ドロン氏が無くなった。
アラン氏といえば「太陽がいっぱい」あたりが有名だと思うが、僕の中でその名前で思い出すのは「あの胸にもういちど」である。
というのも、「太陽がいっぱい」はまだ未履修といえこともあるのだが、アラン氏が出演した作品の中でこの「あの胸にもういちど」は突如としてアカウントを消してしまったSNSのとあるフォロワーさんに勧められて観たからである。
暑い日が続いておりますが、らっこさんはお元気でしょうか。
「あの胸にもういちど」は、主人公の女性ライダー・レベッカの一人称視点で語られる文学的な作品だ。
バイクがキーアイテムの一つとして全面に出ているが、アクション等はなく、淡々とレベッカの心情と不倫模様が描かれている。
恋愛と結婚について哲学的な思想が展開されており、僕自身の思想とは合わないものの、それ自体は非常に興味深く考えさせられるものがある。
確かに結婚という制度は自然や本能といったものではなく、社会が作ったものである。
時代背景を考えると、フランスはどうだか分からないが、日本ではお見合いや政略結婚でカップリングされ、今ほど自由に恋愛できる時代ではなかっただろう。
とはいえ、現代で不倫が許されているワケでもないから、確かに結婚とは不思議な制度ではある。
基本的にレベッカに同情の余地はなく、堂々不倫してはむしろ誇っている節が気に食わないのは間違いない。
悲劇的な結末ではあり、バイクに乗っている身としては他人事でもないのでとても身が締まる思いだが、元を辿れば飲酒や安全装備への意識と粗暴な運転が原因だ。
しかし、燃えるような恋に生き、その身軽さを形にしたバイクで散るのであれば、それは本人にとって最も気持ちの良い終わり方かもしれない。
余談だが、レベッカの全身ピッチリとして黒のライダースーツというこの姿は「ルパン三世」の峰不二子に似ている(その自由な振る舞いも似てはいる)。
それもそのはず、峰不二子はレベッカをモデルにデザインされたらしいとのことだ。