響け!ユーフォニアム

「響け!ユーフォニアム」(以下、「ユーフォ」)の原作が小説と知ったのは最近で、我々クリエイターにとって特大ニュースであった原作改変の炎上(長い・複雑・ショッキングなため詳細はここでは記載しない)で火の粉が飛び火した時に初めて知った。
とはいえ、よくよく考えれば昨今のアニメは原作付きのことが多いし、京都アニメーション制作のオリジナル作品は「たまこまーけっと」ぐらいだと思う。
つまり、僕は「ユーフォ」をアニメで履修した。

美麗な作画はもはや触れることすら野暮である。
キャストは僕のようなニワカオタクにとってはあまり名のしれていない人が多く、逆によく聞く名前はサブキャラクターを演じている。
僕にとってはそのキャスティングが業界の将来的にも良いと考えていて、そういう意味でも評価をしたいのだが、決してメインキャラクターの演技をサブキャラクターが食っているということはなく、むしろオタク感は薄く、されどジブリほど無味無臭でもなく、自然に耳に入ってくる。
黒沢ともよさんによる主人公・久美子の演技がとても好きで、リアル寄りの反応から棒読みのようなわざとらしい台詞まで、聞いてる側としてもこうして欲しいがそこにある感じだ。
それでいて、怒りだったり葛藤だったり、そんな感情が数%単位でブレンドされているような声色があったりして、これまで見てきたアニメの中で最も感情豊かなキャラクターに僕には見えた。

さて本題である。
この物語を履修して一番に思ったのは、ここにある音楽は僕が今も尚追いかけている音楽の形であり、「青春」と言う。
前に「けいおん!」について、当時はただ楽しいことに夢中になり、そして「あの頃は楽しかったね」と振り返るための音楽の形と評し、それを「青春」だと言った。
しかし、「ユーフォ」にある音楽は、今その瞬間――目の前のことに全力になれる「若さ」――で本気の勝ち負けに挑む音楽の形だ。
それはスポ根作品と同じ文字通り勝負の世界であり、全力の勝った負けたに捧げる、それもまた「青春」以外の何物でも無い。

僕は小学生の頃は少しだけ吹奏楽部に在籍していて、パーカッションを担当していた。
というのも、当然トランペットだのなんだのの花形に憧れはしたが、リードは鳴らせないしマウスピースも吹けなかったのだ。
そんな不貞腐れも少しあったし、何より僕も周りもガキだったから、賞を取るだの何だのといった大層な目標はなかったし、そこに「青春」しようとは思わなかった。
しかし、その後の僕の人生は残念ながらデッドオアアライブの日々で、仕事と学業で殆どが終わり、音楽にかけられたリソースは少なかった。
軽音部の類には所属しながらも殆ど顔を出せなくて、「けいおん!」のように楽しい青春を送ることは叶わなかった。
かといって、「ユーフォ」のように切磋琢磨に精進し、大会で賞を目指すような「青春」も辿れなかった。
だからこそ、きっと彼女らと違って今も醜く音楽にしがみついて生きているのだと思うし、これからもそんな音楽を続けていくのだと思う。
そんな僕ではあるが、気持ちの良いリズムが刻まれれば楽しくなってくるし、美しい和音には心ときめくし、素敵なメロディーには思わず歌いたくなる。
「音」というただの物理現象なのに、音楽によって楽しくも物憂げにも激しい激情にもなる。
言葉を超えた世界である「音楽」がやっぱり好きだし、好きで良かったと思う。

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