蛇にピアス

この手のアングラな作品は正直なところ少し苦手で、というのも僕は育ちこそ悪けれど真面目に生きてきたと思っていて、不真面目さはあくまで「真面目に不真面目」という性質だと自己分析している。
故に、酒にもタバコにも溺れたことは無いし、不純な異性交遊どころか十代の頃は「まだ未成年だから」と断ったら気持ちいいくらいバッサリ振られたこともある。
ロックにこそ陶酔しているし、タトゥーにちょっと興味はあるが、人体改造に興味も無いし、ピアスすら開けていない(着用しているのはフェイクピアス)。
クスリの類も当然無いし、リスカ等も無い。
僕にはそれが当たり前の環境だったから、自分の属していない世界を全面的に映した世界に理解が及ばないのである。

「蛇にピアス」は映画版で履修したが、原作は小説で、芥川賞を受賞しているとのこと。
僕の趣向の話を抜きにしても、R-15ということもありニッチなジャンルの映画なのだが、周りの反応を見ているとその中ではかなり有名らしい様子だった。
確かに僕には理解出来ない世界ではあったものの、人物の心情はそれなりに推察することはできる(と思っている)。
そこにハテナが浮かぶことはあんまりなくて、つまりは心情描写だったり各キャラクターの思考や行動原理がちゃんと一貫しているということだと思う。

物語は結末まで描かれないところで終わっている。
ドラマとして起きたストーリーは歯を飲み込んだことで解決しているが、その後のルイとシバがどうなったのかを考えると、やはり誰も幸せにならないのではなかろうか。
よくネットではコケにされているものの、警察という機関は優秀なもので、御香だの何だのと証拠を沢山残しているようでは逃げ切ることは難しい。
名言こそされていないが犯人はルイの思っている通りだろうし、そしてまたルイは独りになるのだろう。
その穴を埋めても埋めても大きくなっていくというのは一種のエモさではあるが、僕は真面目クンなので「自業自得やんけ」で終わりなので、それが多分僕のモテない要因なのだろう。

制作の面で言うと、肉体改造のシーンはCGと特殊メイクを駆使しているとのこと。
僕の記憶が正しければスプリットタンを動かすシーンや、舌にピアスを差し込むシーンがあって、痛々しくて俗に言うタマヒュン状態になったくらいには違和感がない。
あと、妙にモブの配役が豪華で、ルイのちょっと棒な演技もあって、どうしたんだこのキャスティングは……と思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?