みなに幸あれ
正直な感想で言えば、「このレベルでホラー映画大賞って取れちゃうんだ……」と思った。
元よりこの手の邦ホラー作品は雰囲気勝負みたいなところがあると勝手に思っているのだが、どうにも「ホレ、こういうのホラーファンは好きじゃろ?」みたいなものを押し付けられているような感じがする。
例えば、急に儀式のような動作を行い始め、それと対照的に笑い始める「不調和」のような類。
正常なのは主人公だけかのように祖父母が不可解な言動をし始めるとか(作品の根幹である生贄儀式のような意味ではなく、壁に向かって歩き始めるとか、指を舐め始めるとか、その必要性の感じないもの)。
儀式(?)に使う生贄(?)に行う縫合のビジュアルも手垢に塗れた手法なワケで、ウーンこの作品ならではの魅力って何だろうと考えてしまうのである。
誰かの不幸の上に幸せが成り立っている、みたいなテーマを掲げたかったのだと思うのだが、であれば余計なものが多すぎる。
前述の不可解な言動だとか、生贄(?)の縫合も重要ではないし、生贄(?)おじさんが外に出てフラフラするのも要らないし、謎の組体操での出産なんかその極みだ。
一家の風習ではなく地域の風習なのであれば、例えば村の外の人間でないと〜みたいな生贄(?)の選び方に工夫が欲しかっただろうし、縫合も行うのであれば何か理由付けやルールがあった方がリアリティーがあった。
実際に生贄や儀式といった風習は世界中の歴史にあったワケで、それらをちょっと参考にするだけでも不気味さは増したのでは無かろうか。
一人だけ何にも知らぬまま大人になった主人公という設定もちょっと雑だし、ここまで狂気を感じ取っていながら警察や救急に働きかけないのもナンセンスだ。
演出の都合と言われればそれまでなのだが、警察からも「あーね」みたいな反応が出たらもっと主人公の焦燥が増すだろうし、逃げられたんだか逃げられてないんだか分からんおばさんのシーンを入れるくらいならもっと入れるべきシーンがありそうだ。
おばさんの頭をカチわったときの主人公の悲鳴が叩きまくって歪んだ大音量なのが一番ビビったので、ある意味一番ホラーを感じたのはそのおばさんのシーンなのだが。
邦ホラーには洋ホラーとは決定的に異なる特徴と魅力があり、故に少し僕の中に期待がある。
「ミッドサマー」や「パラノーマル・アクティビティ」のような洋ホラーに世界的ヒット作がある中で、邦ホラーにも「リング」に続くヒット作が生まれることを、こういった界隈の作品から期待している。
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