とある飛空士への追憶

ライトノベルというと、今では俗に言う「なろう系」を中心に10代半ばをターゲットにしたコメディカルなものが非オタクの印象だと思う。
元々が官能小説の流れを汲んでいると認識しているが、「ギャルゲー」や「エロゲー」に分類されるような女の子がいっぱい出てくるシナリオで結構性的描写を含む作品が多いというイメージもあるのではなかろうか。
少なくとも、現ストレートエッジ社の三木一馬さんが大活躍していた時代が直撃する世代である僕がそういうイメージだ。

そんな中で、電撃文庫とガガガ文庫は結構硬派な作品が多かった印象がある。
先程から印象だとかイメージだとか曖昧な言葉ばかり使っているが、これは僕自身がライトノベルにガッツリのめり込んでいたワケではないことの保険である……ご容赦。

「とある飛空士への追憶」は、ガガガ文庫から出版された犬村小六先生の代表作品だ。
アニメ映画化された他、シリーズ続編がTVアニメでも放送されている。
シリーズ全体を通して硬派で読み応えの重いファンタジー作品であるが、特に「追憶」は他のライトノベルとは一線を画す濃さと鮮やかさがある。

そのタイトルにある通り、空を舞台に欧風でスチームパンクを感じる世界観、二国の争う空戦模様……。
その広い背景の中でたった二人のロマンスが描かれているのがとても美しい。
ライトノベルといえば読者層の目線に近い中高生の主人公が中高生という社会的立場で物語が進むケースが多いが、そんな安牌は迷いなく切り捨てているのが面白く、僕のようなタイプのオタクにはブッ刺さるのだ。

後にハードカバー版が出版されているように、この作品はライトノベルの皮を被った一般ファンタジーである。
そもそも一般小説とライトノベルの差は何か?と考えてしまうし、それを僕はハッキリと回答できない。
もちろんラブコメを楽しむライトノベルも好きではあるが、ヘヴィーな読後感こそが読書の醍醐味だと僕は考えている。

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