ガールズ&パンツァー

2010年代のオタクであれば「ガルパンはいいぞ!」とガルパンおじさんから営業されたことがあるだろう。
実のところ「ガールズ&パンツァー」(以下「ガルパン」)は良い。
程よく頭がお花畑で見ていられて、程よくアツい展開があり、程よくミリタリー欲を埋めてくれる。
良くないのは作品の内容に対して細部までリアルを詰め過ぎた結果、TVシリーズも劇場版も伸びに伸びたことぐらいである。

乙女の嗜み・戦車道!という突飛でワケの分からんアイデアが主軸となっていて、「ストライクウィッチーズ」や「艦これ」を初めとしたミリタリー✕美少女コンテンツが一同に介した当時のあのタイミングでなければかなり怪しいIPだったのではないかとちょっと思っている。
そんな取ってつけたようなコンセプトながらスムーズに受け入れてしまったのは、念入りな背景設定やミリタリー描写の丁寧さがあったからだ。
スタッフロールには当然のように自衛隊の協力があり、ミリタリー筋で見かける名前も並んでいる。
音は実音を収録したらしく、出来物のSEとは全く異なる臨場感がある。
設定資料やスピンオフ作品を見ると、物語の前後背景も綿密に用意されていて、知れば知るほど作品にリアリティーを感じて強引な設定や作品の緩い雰囲気に次第に納得してしまう。
この知れば知るほどという沼こそが「ガルパンはいいぞ」というミームの根源だと思う。
良いコンテンツである。

緩さも重要なポイントだと思う。
キャラクターの頭身は低めに描かれていて、キャラクターデザインもデフォルメが強い。
各キャラを深堀りするようなタイプではなく、とにかく分かりやすいキャラ付けをしてたくさん出すというのも良い緩さだ。
ミリタリーモノはキャラが多くなりがちだが、その弱点をうまく活かした格好に見える。
廃部の危機を救うために!という設定は僕の中では創作内でもトップクラスのクソ設定だと思っているのだが、その雑さもまた上手く使われていて、話が硬派にならないことで独特の立場を作り出した。
幼稚園かのようなチーム名のようないかにもなものから、戦闘不能になると白旗があがるというわかりやすさとコミカルさを両立した演出も優しいし、リアルにモデリングされた洗車のキューポラからヒョコッとデフォルメの強い絵の女の子が顔を出すのもギャップがあって可愛らしい。
アンツィオ高校の面々が特に顕著なのだが、頭身の小さい女の子がワラワラと集まって頑張っている姿は小動物とかアリの行列とかを見ているような、そんな微笑ましさもある。

ミリタリー題材でありながら気楽に読める魅力がえり、それでいて知れば知るほど綿密に紡がれている物語やミリタリー描写は硬派なオタクにもよく刺さる。
この相反する属性の両立をここまで綺麗に纏めた作品はそう多くは無いだろう。
惜しむらくは本当に制作が伸びに伸びていることで、劇場版には待ちくたびれた結果、僕の中では熱がもう完全に冷めてしまったことだ。

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