がくえんゆーとぴあ まなびストレート!

ロリっぽい絵柄に平仮名のふわっとしたタイトル、コミカルに始まる物語。
そんな雰囲気に騙されることなかれ、その内容は決して侮れるものではない。

「このままじゃ廃部・廃校になっちゃう!私たちで何とかしよう!」という青春活劇は有り触れていて、僕らの世代だと「ガールズ&パンツァー」とか「ラブライブ!」辺りは真っ先に名前が挙がる。
しかし、戦車道にしてもアイドル活動にしてもフィクションの側面が強く、あくまでテーマのために用意された背景、ドラマの発端を作るための設定に過ぎないと僕は考えている。
さて、この「がくえんゆーとぴあ まなびストレート」(以下「まなびストレート」)は同じく私達が何とかしなくちゃ系ではあるが、その要素の意味合いは真逆に見える。
学生がムーブメントを起こすということ自体を中心に据え置いて、周りに他の要素がついているイメージだ。

メインキャラクターは5人だが、主人公はみかんとまなび、目線としてはみかんだと思う。
転校生ながら生徒会長に名乗り出るまなびの積極性、そして学校生活への考え方とそれに対する熱意は、かつて学級委員ですら押し付け合いだった頃の我々に「あなたにとって学校は何ですか?」と問われているような居心地の悪さを感じつつ、そうだったのかと気付かされることも多い。
尤も僕は押し付け合いが長引くと早く帰ってモンハンがしたいがために「じゃそれ俺でいいから帰るわ」で応援団長まで引き受けていたので、そこまでは何かを刺された気持ちにはならなかったのだが。
しかし、不平不満を感じつつも与えられるがまま流されるがままの人が多い中で、自らがアクションを起こすという気概やリーダーシップには熱く込み上げるものがある。

他のメインキャラクターにも各々の葛藤があり、時には空中分解する様子も描かれている。
この絵柄でそんなシリアスな展開が、と良い意味で詐欺られた気持ちだ。
その葛藤もキャラクターのフィクション性によるものではなく、「頼られたら断れない」とか、「周りが勝手にイメージを押し付けてくる」だとか、現実に感じるものばかりである。
最後には「何のために学校に行くのか」そして「これからの進路」という、誰もが直面する大きな葛藤に向き合っていく。

最初に私たちが何とかするんだ的な物語の話をしたが、上記のテーマを孕みつつ、生徒会が廃校(正確には合併だったと記憶している)に立ち向かい、そして学生の限界に打ちひしがれる。
そしてベストを取りに行った中でベターに着地するという現実に収束し、文化祭の開催のために彼女たちは青春を費やすのである。
その物語の儚さと美しさは、まさに青春を謳歌していることに他ならないと僕は思う。

ちなみにOP・ED映像もかなりアーティスティックで見応えがあり、特にOPは伏線にもなっていてとても視聴の満足感が高く、それを感じるためだけでも「まなびストレート」を履修する価値がある。
それはそれとして、劇中の軽音部の楽曲が「アニメの劇中バンドの楽曲」という括りで地味に気に入っているのだが、配信されていないのが悔やまれる(茅原実里さんの「桜舞うこの約束の地で」という曲です)。

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