リコリス・リコイル
1クールのテレビアニメを見て、「面白いけど2クールでやってほしい内容だったな……」と思う作品は結構ある。
そういう作品は大抵は原作付きで、アニメオリジナルは1クールで綺麗に収まる風呂敷の場合が多い。
ところが「リコリス・リコイル」(以下「リコリコ」)は珍しくそれに当てはまらないパターンで、そこだけが唯一もったいないと思う作品だ。
同じパターンで個人的に真っ先に思いつくのは「Angel Beats!」なのだが、こちらは「リコリコ」以上にもったいなくて壊滅的な最終話に悔しさすら覚えたのだが、その後に大ボリュームのゲーム版が予定されていると発表があって「そっちが本命か〜」となった覚えがある。
尤も、そのゲーム版が本当に出たかどうかは別なのだが……。
その点では「リコリコ」は一応は予定調和が成された体があるし、順調にメディアミックス展開がされている。
この差は生粋のゲームライターである麻枝准氏がアニメの脚本にも挑戦したことでそのサイズ感に上手く合わせられなかったことだと思うのだが、その点は適材適所に人員配置がされているというか、かなり多くのスタッフがそれぞれの舵取りをしていて、かなり理想的なメディアミックスの展開と結果を生み出している。
これからのオリジナルアニメは「リコリコ」がベンチマークになるとヒット作までたどり着けるだろうなと思う反面、こんなにも用意周到かつ綿密に練られた企画と物語でも1クールしかもらえなくなってしまった今のアニメ業界に少し寂しさを感じる。
1クールでも面白かったが、冴えない回が1話2話あったとしても2クールでやってくれた方がアニメとしては面白かった。
スピード感に欠けてメディアミックスはコケそうだが。
あと一応添えておくのだが、僕は「Angel Beats!」の大ファンだし、アニメのみ履修にはなるが結構だーまえ作品は接種してきている。
ビジネス面みたいなところばかり話をしてしまったので内容にも触れておきたい。
上述の通り1クールに収めるには少々もったいない作り込みが災いして、記憶に残る名作とまでは僕の中では行かないものの、世代の人にとっては胸中に残ったのではないかと思う。
千束とたきなのカップリングも圧倒的な凸凹タッグで良いし、ふんわりした日常パートと殺伐としたアングラな世界が相互に作用してどちらを切り取っても重みがある。
暗殺業と不殺の信念というこれまた反する属性が主人公らを純粋な2択の間で揺り動かすのもスッキリしていて、とにかく対比構図が全体的に活かされている。
1クールでは勿体ないとはいえ、終わりまで綺麗に片付けられており、個人的に2期は嬉しくない。
その行き場を失った「もっと見たい」という気持ちをコッチですよ〜とばかりにマンガやら小説やらラジオやらで待ち構えているので、思わず手が伸びそうになる……上手いものだ。
個人的には千束とたきなのカップルも良いのだが、フキとサクラのコンビが見ていてニコニコできます(ややデカボイス)