滑らかで柔らかな光の映像体を目指して vol.1 - 自然光と電気の光
こんにちは。WOWプロデューサーの安斉です。普段は映像制作の案件に関わりながら、元々建築出身ということから、空間を豊かにするために「映像は建築や都市に対して何が可能か?」という問いを、常日頃考えてきました。
先週末から開催されている弊社25周年展覧会「Unlearning the Visuals(アンラーニング・ザ・ビジュアルズ)」にて、Motion Modality(モーション・モダリティ)という私が進めているプロジェクトの新作展示があり、今回はその制作背景や裏話を何回かに分けてお話できればと思います。
光の連続性と離散性について
今回の展示では、会場の一部の通路を自然光のような柔らかい光で満たし、光の変化により通路空間の活性化を試みました。通路内の光はゆっくりとアニメーションしていて、刻々と変化する雲の中にいる雰囲気や、木漏れ日の気配を持つような場を目指しました。
昨今、照明技術の進歩により、LEDの光は安価で寿命も長く、私達の身の回りの光の大半を占めるようになりました。白熱灯はLED電球に代わり、映像を映し出していたブラウン管は、液晶ディスプレイに換わりました。このように現代の生活に無くてはならないLEDの光ですが、私は良い意味でも悪い意味でも、自然光と全く違う光だなぁと感じています。
何が具体的に違うのかというと、太陽の光(or 炎の光)を、暖かく柔らかい連続的な光とすれば、LEDの光は、どことなくブチブチと途切れ、冷たく硬く離散化された光の印象を私は持っています。(図1)
それは、音楽や写真がアナログからデジタルに移行した状況と同じく、光に関してもデジタル化の際に抜け落ちてしまう情報や、ハイレゾ音源や、高解像度データと同じように過度にハイスペックな光を追い求めてしまう恐れがあると感じています。このようなアトム(物質)からビット(情報)へ移行する際のデジタル化問題が、現在の光の状況にも当てはまると感じていました。
モーション・モダリティでは、LEDなどの電気的な光を、どうやったら自然光に近づけられるか?を模索し、映像の光を間接照明のように一度物質に馴染ませ拡散/反射させる事で、離散化されたデジタルな光を、連続した滑らかなアナログの光に戻すための仕組みが特徴になります。
(下記画像 : Motion Modality / Layer | 2022)
ぜひ一度会場で、この柔らかい光を体験してもらいたく、もし近くにお越しの際には足を運んで頂けたら嬉しいです。
次回、vol.2に続きます。
<Writing : Producer / Fumihito Anzai>