夢の中のヒトデの話
こんな夢を見た
水槽に新しい水草を入れ、そこに更にある生態を一匹投入する。
その生物は、淡水生でありながら、海に住んでいるヒトデのような姿をしていた。
青色のぽってりとした星型のフォルムに、オレンジのラインが入っておりどことなくトロピカルなビジュアルをしている。先に投入した有茎草のグリーンや、低床の白い砂にも映えそうな生き物である。
聞くにとても丈夫な生き物だそうで、繊細な水合わせや温度合わせは不要とのことだったので、お迎えして即水槽にドボンである。
エビや魚のように跳ねることはないものの、早速ゆっくりとした動きで水槽内を動き出すヒトデ。
興味深く見ていたが、お腹が減ったので人間もご飯とする。部屋を離れる。
食事を終え水槽の部屋に戻り私は目を見張った。ヒトデが水槽内に先程植えたばかりの水草をバリバリと音を立てんばかりに猛烈な勢いで食べていたのである。
もうすでに水草は植えた当初の半分くらいになっており哀れである。
私は慌ててヒトデを水槽から取り出すことにする。
大きなピンセットでヒトデを掴む。しかし驚くべきほど大暴れし水槽内を逃げ回るヒトデ。低床は巻い水草は浮きもうメチャメチャである。
そこそこな重みのあるヒトデをピンセットで掴むのは非常に難儀であるが、いかんせん怖い。手で掴むと齧られそうである。
ようやく気合いでピンセットを用いてヒトデを水槽から取り出し、とりあえず買ってきたペットショップのビニール袋に入れる。
半ば呆然と濁り変わり果てた水槽をしばし眺めているとバリバリと音がする。ヒトデがビニール袋を齧りながら外へと脱出を試みているのである!
ここで目が覚めた。
この夢に登場したヒトデは当然私の夢が生んだフィクションである。現実にはこんなアグレッシブなペットは販売されていない。
いない、と言いたいところだが、いないこともない。散々あちこちで話題になっている、飼えなくなったペットを野外に棄てるだとか、外来種だとか、そういう可哀想なペットたちと私の夢に現れた怖いヒトデは同じ存在である。
ペットを飼えなくなったから棄てる、という行為は自分には無縁のつもりでいる。
私はズボラな自分でも面倒を見れる生き物(水草水槽の中の私よりも掃除が得意なエビの皆さん)しか飼っていない、つもりでいる。
しかしその想定を生き物が底知れぬパワーで超えてくることは十分にありうる。
紆余曲折経て最終的にそういう状況になってしまったとき、どうするのか。
夢の中に答えはなかった。
その恐怖の象徴が夢の中のヒトデである。
そのように思った。