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土門蘭さんに会った日のこと

本当のことを書きたい、といつも思っている。

土門蘭『死ぬまで生きる日記』

この一文を読んだ時、私は土門さんが好きだと思った。
私もいつも、本当のことに触れたいと思っているから。

土門さんの言葉は、混じり気がなくて、素直で、まっすぐで、丁寧だった。
読み進める手が止まらなかった。

わたしの未来はここにあるかもしれない、と思った。

_______


所属しているゼミのゲスト講師として、土門さんが来てくださった。

確かあれは3月ごろだったと思う。
ゼミの先生に、私の今後について話を聴いてもらっていた時「土門さんゲストにお呼びしようか」と、先生が言ってくださった。

これが直接的なきっかけかどうかは分からないけど、色々な縁が繋がって土門さんに出会えた。先生、土門さん、ありがとうございます。



土門さんにお会いして、たくさんのことを思った。

ものすごくおこがましいけれど、私は土門さんと似ていると感じる部分がある。

地球に住んでいないこと。
文字が読めなくなるという経験をしたこと。
よつばとが好きなこと。
誰かの哲学や美学に触れたいと思っていること。

これだけじゃなく、他にもいくつかある。

その人の根幹にあるような部分で重なっていると思えることは、そのまま私が土門さんに惹かれる理由となった。

土門さんにお会いしたのは初めてで、でも私ははじめましての感覚がなかった。土門さんの文章を通して、いつも土門さんとお話していたから。

土門さんの文章に触れていると、いつの間にか自分のことを考えている。
これは一つの共鳴と言えるのかもしれないな、と思う。

あの日、たくさんの時間を共に過ごさせていただいた。本当に贅沢だった。
黒いワンピースが本当に似合うなあとか、ビール飲むんだなあとか、そういうことまで思えたのが嬉しかった。こんなにすぐそばに、土門さんがいる。

同時に、この日のことを言葉にするのに時間を要した。
それはもしかしたら、心のどこかに何か引っかかるものがあるからなのかもしれないと、数日経ってようやく気づいた。

あの日、本当に言いたいことが、本当に聴きたい問いが、私の口から出なかったような気がしている。

一番伝えたかった何かが、言葉にできなかった。今でもそれが何だったのか分からない。

眠れずに、ベッド横の窓を開けて、人の気配がない空気を吸い込む深夜に似ている。一番伝えたかった何かなんて、そもそも存在していないのかもしれないけど、心のどこかがずっとざわざわしている。
海の底で、沈んでいるみたい。溺れているって分かってるのに、水面に上がろうとしていない感覚。



きっと私は土門さんになりたくて、同時に、土門さんになることから避けている。

これほど書きたくて、聴きたいのに、私が書いていいのか分からなくなった。

怖いのだ。書くのが。聴くのが。
こう思ったのが、人生で初めてで戸惑う。

今これを書いていて、怖いという単語が出てきたことに驚く。
やはり私は、書く人間なんだ。書くことで、自分がどこかに導かれる。


進路の話が定型の語りになるくらい、いろんな人にどうするの?と聞かれる。

前にnoteにも書いたが、本当に決めることがあまりにも苦手で、探すのも苦手で、だから今ものすごく苦しい。

多分私は、書いたら嫌でも比較する。聴いたら嫌でも思い出す。
私にしかできないことなんてないのに、それを追い求めてしまう。

でも、怖いと思いながら、多分今が人生で一番書きたいと思っている。

私は、どこかで忙しさに逃げている。
今の生活は、正直心が死んでいると思う時が、何度もある。
それでも、書きたいし、聴きたい。嫌になるくらい、書いて聴こう。言おう。知ろう。行動しなければ見えない世界がある。

頑張りすぎなくていいと言い聞かせながら、それでも前に進みたい。


私は土門さんにはなれない。それは当たり前だ。人はみんなひとりだから。でも、21歳という年齢で土門さんに出会えた。
土門さんにはなれないけど、私は私になろう。


本当のことを書きたいと思っている土門さんは、実際にお会いしてみても、本当のことを話してくれた。真っ直ぐ向き合って、本当の言葉を送ってくれた。土門さんの一つひとつの呼応が、ありのままだった。

土門さんはTwitterで、「伸び盛りの樹みたいに果敢に貪欲に取り込んでいる。その勢いが眩しく羨ましく、美しいなと思いました。」と呟いてくれている。

でも私は、土門さんの人への向き合い方が、聴き方が、返し方が、あまりにも羨ましくて、本当に、美しいと思った。どうしようもなく土門さんみたいになりたくて、だから私は土門さんになることを目指すのではなく、私は私を目指そう。


土門さんに伝えたかったことを、探したい。
見つからなくても、次に土門さんに会う時には、たくさん書いて聴いた後の私を伝えたい。

私の旅は、まだ始まったばかり。


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