21歳5ヶ月の覚悟、私は私を生きる
どう生きていくか、何がしたいか、やっと、はっきり分かった。
やっと、はっきり、言えると思った。
だから、それに向かって歩いていく。
今は何も持っていないけれど、この心だけは醒めぬように。
未来は、自分の選択の上に成り立つと信じていたい。
今日まで、tefu lounge下北沢にて開催されていた企画展「海を宿す」。
そのオープニングイベントである、ピアニスト橋本秀幸さんの演奏会に足を運んだ。
演奏会が開催されることを知ったその時はあまり心に引っかからず、暇だったら行こう、という軽い気持ちだった。
それが「満席になった」というお知らせを見た二度目、なぜか心のざわざわが止まらなかった。
あ、これ、私行かなきゃだめだ。
そう思い、席数増加の告知をひたすら待った。
行きたくても行けない方もいる。それに対し私は、家からほど近い場所で開催されて、日程も空いている。満席になったのに、まだ行ける希望が残されている。
こういうことを、私は運命と呼びたい。
演奏会は、一言で述べると、苦しくなるほど穏やかで、美しいものだった。
40名ほどの人数が集うといっぱいになるあの小さな部屋で、橋本さんを囲う。
キャンドルの光が揺れている。人の動きが、息遣いが聞こえる。
若者が集う街で、唯一、外界と断絶されているかのような場所。
あの時の空気を忘れることはできないと思う。
厳かなほど静かで、でも誰かがすぐそばにいることに安心する。
橋本さんのピアノは、優しくて、儚くて、切なくて、何かを思い出す。
懐かしい、柔らかな記憶。
その音色が、その想いが、あの部屋を満たしていくことを感じた。
時々、意識がなくなった。
ふとどこかの世界に引き摺り込まれていく感覚。初めてだった。
眠ってしまったのかもしれない。
でも、それにしてはあまりにも、私の心は動き続けていた。
海の底に近い場所で揺れていた。
橋本さんのピアノの音色を聴きながら、ずっと、何かを考えていた。
将来、人、自分、空気、言葉。
目を逸らし続けていたけれど、やっぱり、どうしても環境が自分を形作る。
まわりの人が就職活動に勤しむ姿を見て、どうしても、焦る。
自分の生きる道はみんなと同じではないと知っているのに、どういう生き方がしたいかもぼんやり見えているのに、怖かった。
覚悟が足りないと言えばそれまでで、ただ、決意するには、あまりにも世界を知らない。
まだ何も分からない。
でも、きっと10年後も、30年後も、多分、何も分かっていない。
それなら。
だとしたら。
私は、ただ、こういう人生がいいと思った。
あかしゆかさん
橋本秀幸さん
萬壽洸樹さん
うたうみさん
若尾真実さん
デニム兄弟さん
ここに名前をあげていない方でも、ずっとネット回線を通じて触れていた方たちが目の前にいて、ひとりで静かに、でも確かに強く、心が高ぶっているのを感じた。近くにいることに、ずっとどきどきしてた。
演奏会終了後、萬壽洸樹さんの写真に心を奪われていたら、ご本人様に話しかけていただいた。
なんか、大丈夫な気がする。
初めて会った気がしない。
こちらこそ嬉しいです。
ぜひ岡山に来てください。その時は連絡してね。
憧れという言葉でまとめてしまいたくないほど、私の希望であるその人にそう言ってもらえること。
本当に、本当に、嬉しかった。
少しだけ、世界に、自分を認めてもらえた気がした。
撮ることと、書くことで生きる。
2022年10月24日
「将来なにやりたいの?」という問いを投げかけてくれた後輩がいる。
写真家になりたい、と誰かに伝えたのは初めてだった。
私のやりたいことはすごく私らしいし、本当にそれを目指すのであれば面白くていいと思う。
そう言ってくれた。
ありがとう。初めて誰かに伝えたのがあなたでよかった。その問いを投げてくれてありがとう。肯定的な言葉を送ってくれてありがとう。
私が所属している研究会の先生に、将来どうしたらいいか分からなくて悩んでると相談した。
「何してる時が一番楽しい?」
先生の最初の言葉は、この一つの質問だった。
カメラで何気ない日常の写真を撮るのが好き。
何が好きかよりもなんでそれが好きかに興味がある。哲学とか人生とかそういう話を聴くのが好き。
この二つは繋がってる気がするし、ここにヒントがありそう、と言ってくれた。
ちゃんと見つかってるじゃない、とも。
そう言って笑ってくれる先生が好きだと思った。
先生は、私が知る限り誰よりも自然体で、目の前の人に、出来事に、世界にまっすぐな人だと思っている。
誤解を恐れずに言うと、本当に子供みたいに純粋で、人生を面白がって生きている。
大学の仕事を仕事だと思ったことがないと言っている先生の姿を見て、ああいいなあと思った。
好きとか嫌いとか、楽しいとかつまらないとかではなくて、運命とかでもなくて、本当に言葉にするのが難しいけど、先生が先生で良かった。
私が大学に入った一番の意味は先生と出会うことだった、と初めて話した時に感じたことを今でも覚えている。
そんな先生に、私の将来が楽しみだと言ってもらえること。少しも私の言葉を否定せず、聴くことで導いてくれること。
本当に、恵まれた人生だと思う。
私の選択を後押ししてくれる人がいて、聴いてくれる人がいて、笑ってくれる人がいる。
私にできる、その人たちへの唯一の恩返しは、私が私として生きることだ。
出会い続ける。出会い直し続ける。
知らないことを知る。
世界の景色を見て、人の心に触れる。
そのために、私は撮って、書く。
聴いて、想って、感じて、伝える。届ける。
安心して呼吸できる場所、海に揺蕩うかのような空気が流れる場所にいること。そういう場所を創ること。
多分、きっとこの先ずっと不安だと思う。
今でもこの選択でいいのか分からない。
人より選択肢の多い身であることを知っているから、余計に、お金とか、地位とか、周りの目とか、もう捨ててしまっていいのか分からない。
でも、大丈夫だと信じてる。
21歳5ヶ月という年齢は、決して早くはないけど、でもきっと遅すぎることはない。
人生は一度きり。
人が生きる意味は、幸福に出会うことだから。
私にとっての幸福は、自分がしたいことをして生きるということ。
だから、私は、
撮ることと、書くことで生きる。
2022年12月18日 自室にて
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