Cotton Garments 3 〜サファリジャケット混迷編〜
>>>>>>>>>>>>>>>>前回より
それでは、1930年代以前のBush Jacket, Safari Jacketに類似するミリタリーガーメントを見ていきましょう。
もうおなじみですね。MTOC初版(1928)のService Jacket。
イギリス英語では、こういったユニフォームの上着は“チュニック”と呼ぶこともあります。 このジャケットもミリタリーチュニックで伝わります。
ボックスプリーツ入りのパッチポケットWithフラップの胸ポケットと大きなベローズポケット。
ベローズポケットはマチ付きのパッチポケットだと思って貰って結構です。
このポケットは上のダイアグラムではそこまで大きくはないですけども、大きくつけられる場合が多いです。その方が雰囲気も出ますね。
そして、それはジャケットのフロントにつくと言うよりも、着たときに腰を覆うようにサイドにつくような感じになります。
昔の本ではマチがつけられたポケットをその作りから“Boxed”と呼ばれたとありますが、正直今それを言ってイギリス人でも理解してくれるかどうかは分かりません。
まぁ、布ですが箱を作っているような感じではありますよね、言わんとしていることは分かりますが、Bellowsとは“ジャバラ”構造のことですから今ではそちらが一般的でしょう。
ダーツの取り方、取り付けられるポケット、プリーツやベント、カフ等に細かい違いは見られますが、WW2のブッシュジャケットもだいたいの基本形はこれになります。(後々現物も何着かお見せいたします。)
T.H.Holdingさんの“Coats(Cutting)” からです。初版は1885年ですが、手元にあるのは1902年の第4版。(別に4版ばかしを狙って買っているわけではありませんよ。これについてはたまたまです。)Holdingさんの著書は以前に少し触れましたが、有名ですから押さえておいて損はしません。今後も出てきます。そして、詳しくやりたいと思います。
コレクターとしては集めたい銘柄の一つですね。
まずお目にかからないであろう激シブの一冊が手元にありますから、今後期待しておいてください。
MTOCのではラペル型の襟でしたが、こちらはスタンド&フォール型の襟がついていますね。
すこし極論に近いですが、こういったガーメントではS&F型(特にスタンドカラー)がより古い時期に広く使われていたタイプになります。ラペル型がのちに覇権を握るのは皆様もご存じの通りです。
上ではウェストシームが入っていますが、ボックスプリーツ入りのブレストポケット、ヒップにベローズポケットがついたMTOCと同じタイプのポケットパターンですね。
腰ポケットはノーマルなパッチWithフラップであったり、パッチではなく普通のポケットがつくものも後々生まれます。
これはLangridgeさんのPremiere Systemから。
初版は1900年です。残っている記録にはその後1904年に改訂版が出版されているとあります。この本自体に記載はないのですが1904年版だと思います。(ちょこちょこ1902年という数字が出てくるので、少し混乱しますが、初版ではなさそうですね。)
とりあえず、Holdingさんのモノと似ていますよね。
Langridgeさんは25年以上ウエストエンドの現場でお仕事をしていた人で、Minister’sCutting Academyでヘッドティーチャーをつとめていた人です(この本の出版当時)
Minister社も押さえておきたい名前の一つです。John Williamson社と双璧をなしていたという印象が私にはあります。
以前に話した名著、ThorntonさんのSectional SystemはMinister社から出版されています。
ヴィクトリアン〜エドワーディアンのファッションマガジンを三つあげるならば、T&Cマガジンの他に以前にも紹介したWest End Gazette、そしてもう一つがMinister社のMinister’s Gazette of Fashionになるでしょう。
もちろん、他にもあるのですが、まずはこの3つを押さえておくと何かと捗ると思います。
脱線いたしましたね。
脱線ついでに、せっかくなのでカフのディテールにも簡単に触れておきましょう。後々これも生きてくると思いますからね。
ほんの少しだけですけども、カフのディテールも後のBush Jacketをみるポイントになります。
これらは先のHoldingさんの“Coats”からになります。
いろいろなカフのスタイルがあるわけですよね。今のラウンジジャケットにはあまりみないバリエーションです。
ミリタリーにもミリタリー特有のカフがありまして、海軍のモノは特に有名ですよね。
セレモニアルなものは上のサービスジャケットのページに載っているような洒落たディテールが多く、Bush Jacketではカジュアルでアクティブなユーティリティウェアという理由もあり、シャツカフになっているモノが多いのが特徴です。そういったモノも後でゆっくり確認してみましょう。
上の文章の中に興味深い一節があります。
“Again, very short slits with buttons crowded togerher is an evil.”
写真を見て貰っても分かると思いますが、ボタンの間隔が今のスタンダードなジャケットのものよりも広いですよね。
今では“Kissing”なんて呼ばれるようにカフのボタンが重なり合うほど近いモノもあるくらいですが、1900年当時ではEVILと呼ばれてしまうほどなんですね。
上のカフでもデコラティブなボタンがついたものも見受けられますが、そのほとんどがリアルボタンホールのついたスリットカフのようです。
実際今のようなボタン間隔のカフでは一個開けても開けなくても本当の意味で実践的ではなかったりしますから。
本当に実用的なものでは、ある程度間隔が開いているモノのほうか“リアル”なのかもしれません。
100年経ってそういった感覚(間隔)も移り変わっているのがこういったディテールからも伝わってきますね。
>>>>>>>>つづく