SANDLANDを読んだ感想
ネタバレあり
ドラゴンボールでお馴染みの鳥山明氏の短編漫画の中で最高傑作としばしば言われるSANDLANDを読んだ。作者の訃報の影響で鳥山明コーナーが本屋にできており、評判が良いらしい事は小耳に挟んでいたので購入し最近読んだ形だ。
まず感想としては全体を通してテンポが良く小気味いい。水を高く売り続ける為の国側の非道による悲しい過去もあるがそういった湿っぽい描写は最小限で登場するキャラクターが総じてカラッとしていて気持ちが良く、話の深みと楽しく作品を読ませる事を上手く両立している。
この作品の中で特に目を引くのは戦車による戦闘シーンだろう。勝利する為に工夫と経験で敵の数の有利を覆していく様が読者をワクワクさせる。太陽を背にして逆光で敵の目を絡ませたり真上の敵を撃つ為にベルゼブブとシーフで戦車を持ち上げたり戦略を打ち出していくキャラクター達の様を見るのは実に良いものだ。前述したキャラクターの気持ちよさや男臭さ、シバが軍との戦車同士の戦闘で命を奪わずに相手の戦闘力のみを奪って勝利する辺り、宮崎駿監督の紅の豚に通じるものを感じる。
ラストで敵として相対した悪党一家のスイマーズが川で泳ぎの練習をしているシーンは無性にジーンとしてしまった。スイマーズという名前を冠しながら父親以外泳いだ事が無いと言う背景から家族で泳ぐという夢が叶った事が示されており、それを以て水不足が解消された事で国民が幸せになった事が簡潔に表現されている。
一巻で完結していて気持ちよく最後まで読める完成度の高い作品だったので自分としても満足だ。映画版もいつか見てみたい。