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夜色のブラウスとデニム

四月、まだ肌寒い休日の午後、電車に乗った。
晴れていて、昼間はブラウス一枚でちょうどよかった。

帰りが夜になるかもしれないから、ツイードのジャケットをカバンに入れていた。

2人で会えるかはわからなかった。
だけど、もし会えたとしても目立たないようにと服を選んだ。

夜の街で目立たないように、夜色のブラウスとデニム。
色気を感じさせないようなアイテムにした。

ピアスだけは大きいものにした。
つけ慣れたアンティークゴールドの控えめな色味。

大勢の集まりの中にあなたを探すのは意外と難しかった。
なぜかというと、白いTシャツの人が多かったから。

視界の中で「違う」が繰り返された。

近くのビルの屋上に登ったら東京タワーが見えた。
私がとても好きなものがゆっくり赤みを帯びていった。

今日はもう会えない。
そう思いながら、待っていた。

会えなくてもいい。
ただ東京タワーを見ながらあなたを思っていたかった。

違う場所で待っていて。
そう言われてメトロに乗った。

東京タワーが見える場所で降りた。
さっきよりも大きく見えた。

一緒に東京タワーをみて、手を繋いで歩いた。
桜の木の下、あなたの右側に座って話をした。

たわいのない話がうれしくなる。
あなたはそんな人。

私の右手とあなたの左手。
人気の少ない夜の街、がらんとした道。

東京なのにこんなに人がいない。
道がただ続いていく。

知っている景色。
駅についてしまった。

もう一駅歩こうか。
足を止めると、抱き寄せてくれた。

ずっとこうしたかった。
まるで少女になった気分だった。

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