久しぶりに松本に行った話 1日目

安心安全18きっぷ

始発の時刻、駅には駅員さんがいないので
インターフォンで18きっぷ利用の旨を伝えて、改札を通してもらった。
あのコールセンター的なところで働く人って大変だなと思う。

片道で¥15,000のところが¥2,500で移動できるんだから
18きっぷを使うのが当然のことだと思うんだけど
誰からも賛同を得られない。それこそ僕にはわからない。

乗り換えは米原、大垣、名古屋、中津川で
最速で行けば、14時台には松本に着ける。
中津川~松本間の中央本線が一番のハイライトで
大好きな木曽川を眺めながら、優雅な電車旅を楽しめる。
反面、途中でお腹が痛くなったりで下車すると
2時間ほど、見知らぬ山間の田舎駅に放置されることになる。
のんびりと、これからの道程を思い浮かべながら過ごした。

名古屋での乗り継ぎに30分猶予があるので
たばこでも吸おうかなと思って一度、改札を出た。
東海は朝まで結構な雨が降っていたようで
かなり蒸し暑く、しっかりと汗をかいてしまった。

名古屋から中津川の電車は異常に寒くて
念のために持ってきたゴアテックスのジャケットが役に立った。

中津川でお昼ごはん

ちょうどお昼時に中津川に着いたので
駅前の『ゴジュウバン』という焼きそば屋へ入った。
お店は地元の人でパンパンで
お持ち帰りの注文もパンパンで大変そうだった。
焼きそばは白くて、自家製ラー油をかけて食べるとすごくおいしかった。
何故かビールはハートランドで、これもなかなかにイケてた。

混んでる中、ビール飲んでちびちびやるのは申し訳なく思ったので
名残惜しいけど、2杯で切り上げることにした。
「お待たせしてすみませんね」と上品なおかみさんに言われて
”いや、がんばってください”と、変な返事をしてお店を出た。

コーヒーでも飲みたかったんだけど、手ごろなお店が見つからなくて
ぼーっと歩いてたらでっかいショッピングセンターに着いた。

入ってすぐの催事場にはリアルな恐竜の展示があって
おばあちゃんと小さな男の子が、退屈そうにそれを眺めていた。

ぐるっと一周、入ってるお店を眺めて回って
小さな靴屋で、その流通力に思いを馳せて
立派な本屋で、激辛3手詰めの本を買って出た。
次の電車まで、まだ一時間ほどある。時間が経つのがゆっくりだ。

モヤモヤした天気はどんどん夏の青空に変わり
澄んだ空気で日差しが痛く感じ始めた。
すごくシャレたハンバーガーショップに入って
コーヒーだけ頼んで、さっき買った詰将棋の本を開いた。
コーヒーが運ばれてくるのと同時に『マーシィクン』からLINEが来た。
「今日はめちゃくちゃ暑いわ」

たしかに、着いた時より、10℃くらい気温が上がってる気がする。
これは今回、「避暑」は期待できないかもしれない。
時間が来たので、2回お手洗いに行ってから駅へ戻った。

中央本線は不思議だ。
何もない駅から人が乗ってきて、何もない駅で降りていく。
久しぶりに見る急峻な木曽の山並みには
ソーラーパネルがひとつもなくて気分が良かった。

『ミナミチャン』から「もう松本着いた??」とLINEが来て
窓の外の景色を見て、”いま広岡野村あたり” と返した。
すぐに返事が来た。
「もうすぐやん!」

16時すぎ 松本着

駅前に出ると、聞いてたほどの暑さはなかった。
気温が対流する感じで風が吹いていたので、どこかで雨が降ったんだろう。

『マーシィクン』の仕事が18時ごろに終わるので
通し営業のお店で時間を潰すのが最適解であろう。
google mapで適当なお店に目星をつけて向かったが
店の前に来たところで、なんだか食欲がなくなってやめた。

すぐ近くの「昼飲み歓迎」という看板に誘われて
とりあえずビールを飲んでから、すべてを考えることにした。
焼き鳥とビールをさっさと頼んで
カウンターに座ると、ひどく腰が痛んだ。
壁に掛けられたテレビではローカルニュースが流れていて
長野市に大雨警報が発令されたという速報が伝えられていた。

たばこがなくなったので、買いに行きたいと店員さんに伝えると
「えっと、お荷物は……」と対応に苦慮する表情だったので
一万円札を置いて”戻ってきますから”と伝えて店を飛び出した。
近くのたばこ屋は、すごくちゃんとしたたばこ屋で
店に入ると、たばこのしっかりとした香りがした。当たり前なんだけど。

さっさとたばこを買って店に戻り、一万円札を財布にしまった。
さっき、めんどくさいことを言ってしまったなぁと悔いたので
追加で、島ラッキョウとビールを頼んだ。
そのあと『ミナミチャン』からおすすめの立ち飲み屋が送られてきたが
すっかり手遅れで、動く気になれなかった。

『マーシィクン』も『ミナミチャン』も仕事が終わったようで
「車で迎えに行こか?」
”いや、歩いていくわ まだ島ラッキョが”
「このあとタイ料理屋行くからほどほどで」
”ほどほどで歩いていくわ”
くらいのやりとりをして、予定の時間に店を出た。

途中で、松本城の前で記念撮影だけして
事前にもらった地図を見ながら『マーシィクン』の家へ向かう。
女鳥羽川沿いを歩いていると、松本に来た実感が湧いてきた。
暑くもなく寒くもなく、風が心地よかった。

「ピカピカの新しいアパートんとこを、曲がったらウチや」
そう聞いてはいたけど、目印には頼りない情報だ。
マップを見ると、おはぎ屋があるようなので、それを目がけて歩いた。

一向におはぎ屋が見つからず、不安になってマップを開く。
少し行き過ぎたようで、方角を確かめながら振り向くと
ほんまに「ピカピカの新しいアパート」があった。
こんな「ピカピカの新しいアパート」、そうはない。
何を疑うことがあったのか。人の話はちゃんと聞かなあかんね。

家を見つけた。写真を見る限り、たぶんここだ。70%くらいここ。
別に間違っててもいいやと、思い切ってインターホンを押した。

そこからは、しばらくぶりに会った友達同士のやりとりで
なんとか運んできたお土産のそうめんと日本酒を渡して
お手洗いや喫煙場所や寝床なんかの説明をしてもらって
そんなこんなの、こんなそんなをスムーズに終えた。
「あるで」とニヤニヤしながら『マーシィクン』が冷蔵庫を開けると
ペールエールビールが8本、キレイに並んで冷やされていた。

ここの家は日本酒飲むのか、最後まで確認するのを忘れてた。
飲まないようなら、『ヤマナカ』にあげてやってくれ。
『ヤマナカ』からのメッセージ、第一声が『龍力』やったから。

毎日、聞くのを忘れ続けた話

1.ホタル

みんなで歩いて、『ホタル』というタイ料理屋さんへ行った。
外から見る限り、およそ営業中には見えない暗さだった。

海外からの技能実習生を見るに
日本人と比べて「節電」への意識が非常に高い傾向がある。
とにかく「電気代を安くしたい」という気持ちが第一で
「外に出れば街灯もあるし、暑ければ脱げばいい」という考えらしい。
暗くなると、家を出てそこらをずっとウロウロしている。

僕の地元の話

元々、和食の居酒屋だったんだろうか
店のつくりはカウンターと広い小上がりで
「こっち」では多分やっていけないだろう、松本らしさを感じた。

「お腹いっぱいになってからポテトがくるんや」
『マーシィクン』が、いつもの愛嬌のある感じで
あれがどうやこれがうまいと、お店の紹介をしてくれた。
僕は良い気分でタイビールを頂いて、ご機嫌に今日のことを話した。

あとから来たお客さんが、「あぁっ」とこちらを向いた。
『マーシィクン』と『ミナミチャン』の同僚らしい。
いつも思う。松本ってこういう街なのよね。
「こっち」ではまず起こらない光景で、らしさを感じた。

最後のほうで出てきた「トムヤムクン」を見て
「いっつもはこんなエビ、入ってないで」と、二人は分析していた。
これがなかなかに美味しくて、価値があるものだった。

他に特筆すべきものがないわけではないけれど
意外と「タイ料理」は日本に馴染んでいるのかもしれない。
そのくらいナチュラルに、美味しいものをたくさんいただいた。

”最後の空心菜”

家に帰って、トーキョーグラフィティみたいな部屋で
みんなでレコードを聴きながら、夜を過ごした。
いつもは『竜』で、2時間くらい忙しく話して終わる間柄
久しぶりのゆったりとした時間が、松本カタルシスに溢れていた。

ペールエールビールが4本ほど空いたあたりで
『マーシィクン』の「あーねむい」で、自然とおひらきとなった。
この人、いつも「宣言」してから寝るんよな。おやすみなさい。

明日は何時に何をするとか、そういう話は一切なくて
それでも全然、不安はなかった。何も考えなくていいのだ。
これが自然なのか、普段がせっかちな生活なのか。
大きな解放感を感じながら、薬を飲んで布団に入った。


記憶がなくならないうちに書いておきたい。

僕からは以上。
また追って連絡し〼。

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