『ポールウォーキングはいいぞ!』の巻

3年前、実家から出てここへ越してきたとき
それはもう、えらい体重が増えてしまっていて
戒めとしてウォーキングを始めた。
幸い、近所にはスーパーやドラッグストアがたくさんあるし
何より、実家周りと違って顔を指さない。
ドアtoドアをやめて、帰宅後には必ず歩いて買い物へ行く。
自炊も捗るし、気分がいいものだ。

ここでの暮らしが落ち着いてきたころには
体重も2,3キロ落ちて安定してきた。
それでも毎日スーパーへと歩いて通ったが
変化のない暮らしと体重に退屈を覚えないこともなかった。

先日、都会へ行く用事ができた。
困った。都会へ着ていく服がない。その服を買いに行く服がないのだ。
年に数回、友人と焼き肉を食べに行く時しかおめかししない生活で
気づけばクローゼットはユニクロとワークマンでいっぱいだ。
もういいや せっかくだから、今年はオシャレしようと決意して
一路、ZOZOTOWNへと向かうのであった。

歳も歳だし、ジムフレックスやオーシバルやセントジェームスの
キレイ目でこじゃれた小高い洋服をザッピングする。
いやいや自分のサイズが変わってしまっているので
何をどう選べばいいか もうよくわからない。
そんなときは、持っているアイテムから組み立ててみるのが定石
ディッキーズの874を実家の物置から引っ張り出してきたけど
それもウエストがきつくて入らなくなっていた。

これはさすがにまずい。服より先にダイエットだ。
そして始めたランニングは一日でやめてしまった。しんどかった。
自分の大叔父はランニング後に心筋梗塞で亡くなったし
腰痛爆弾も持っているから、高負荷な運動は気分が良くない。

そんな折、職場にスキーのストックみたいなのを二本
振り回しながら闊歩する変なおじさんがやってきた。
何事もチャレンジの時代、勇気を出して”それ、なんですか?”と尋ねると
「これはポールウォーキングや。ポールウォーキングはいいぞ!」と
清々しい顔で教えてくださった。変なおじさんとか言ってごめんなさい。
何事もチャレンジの時代(再掲)。早速、1万円ほどでポールを買ってみた。

ネットで調べると、それなりに情報が出てきて
歩き方の基本的なフォームや 健康増進効果について
各々、好き勝手に書き散らかされている。
まあいいや。とりあえず、軽率に始めてみることにしよう。

感動した。その日のことは生涯忘れないだろう。
それぐらい、体を動かす悦び、セロトニンドバドバな体験だった。
足腰の負担が、ポールを伝って上半身に分散されて
全身から一気に、溜まっていた悪い汗が噴き出してくる。
足と膝が軽い、これぞ軽快なステップだ。
上腕から大胸筋、腹筋の芯が熱くなっていくのを感じる。
自然と歩幅が広がる。肩甲骨と骨盤がどんどん柔らかく開いていく。
夕暮れの空に初夏の風、世界はこんなにも美しいのか。
これならいくらでも歩ける!さあもっと遠くへ!もっと速く!
今の俺は人間人力車(?)だ!うおォン!うおォン!

気づけば1万歩を優に超えていて
そろそろ帰らないといけないな なんて思うくらい無心で歩いていた。
「ポールウォーキングはいいぞ!」確かに、これはいいものだ。
ありがとう変なおじさん!ありがとうポールウォーキング!

あれからの自分はどうかしていて
仕事の日も休日も、夜寝る前も朝起きてからも
ポールウォーキングのことしか考えられなくなっていて。
一日2万歩を目標に、ガッシガッシと歩き続け
気づけば体重が8キロも減っていた。
普通のウォーキング意味ねえわ。やっぱポールウォーキングよ。
これを読んだ奴は、今すぐポールウォーキングをやれ(命令)。

(余談)
知り合いにこの話をしたら
「消費カロリーからすると8キロも痩せるのはおかしい」
と言われたけれど、痩せたんだよ。信じろ。
内訳は、上辺の贅肉が1キロ、水分が1キロ、
あとは心に溜め込まれていたストレスが6キロだ。信じろ。

自分の両親も足腰が痛くて辛そうだったので
せっかくなので、ウォーキングポールをプレゼントした。
母は半信半疑ながらも「確かにこれは楽ね」と
シーンに合わせて、日常使いをしてくれているようだ。
父は「杖は老人がつくもんやろ それを2本なんてみっともない」と一蹴
ノータイムで傘立てへ ポイしてくれた。
やっぱ 高齢者ってクソだわ。

都会へ着ていく服?しまむらで買ったよ。
僕からは以上。また追って連絡し〼。

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