18きっぷを消化する夏休み イツクシマ編

イツクシマは、タカクラインの御幸を始め、何かと縁深く
先代が修行時代を過ごしたのもここで、自分のルーツともいえる場所。
ひとつボタンを掛け違えれば、歴史が100年単位でズレていたと思うと
なかなかに数奇で、ありがたい運命を人生に感じないこともない。
そのくらいのもんだ。行ったことはなかった。


始発の山陽本線で、宮島口駅へ。乗り換えは岡山と糸崎の2回。

瀬戸内・山陽というのは、国道2号線もそうなんだけど
高い山も広い海もなく、のっぺりとした風景が延々続くだけで
それは退屈なんだけど、おかげさまで平和でもある。
ただただ穏やかで、電車旅としては物足りない区間でもある。
(山口県に入ると、海が見えてなかなか具合良いらしい)

広島駅を過ぎた辺りから、車内はそわそわし始めて
気づけば周りは、サロモンやブルックスを履いた白人だらけ。
宮島口駅で揃って下車すると
皆、無言で地下道を早歩き。そのままフェリー乗り場まで。
観光というよりは通勤のような人の流れだ。

フェリーも18きっぷの対象で
乗船料の200円は不要なんだけど
宮島訪問税として、別途100円を徴収される。
100円と言わずもっと取ってもいいのにね。
なんたって、世界遺産なんだから。

わぁいフェリー ぼかぁフェリー大好き
「あっちにイツクシマジンジャ見えるよー」的なアナウンスが流れ
白人たちは一斉にスマホを取り出して自撮り大会。楽しそうだ。
これから行くところを見ても仕方がないと思ったので
僕は、遠くに見える広島の街を、ぼんやりと眺めていた。
やっぱりフェリーは楽しい。客船だから楽しい。

フェリーを降りて、地図をひらく。
「今の季節、シカは気が立ってて危ないよ」ってアナウンスが
エンドレスで流れている。そっか、シカがおるんよね。
うちの周りもシカだらけなので、なんていうか、何も感じなかった。

スターバックスの前を通って、イツクシマへと真っすぐ向かう。
お昼時を控えた商店街は、これからのピークに備えて
皆、気合十分といった感じで、暖簾を出したり看板を開いたりしている。
合間合間に、昔ながらのお土産物屋があって
どこの店員さんも、レジの前で退屈そうにしていた。


ようやく社殿へ。拝観料を払って、順路を進む。
潮の加減は丁度よく、ザ・イツクシマといった感じ。
海の水は瀬戸内らしく、それほど透明感はなく淀んでいる。

本殿には、ムナカタの神様がお祀りされているらしい。
拝殿では個人祈祷が行われており、高齢の女性が平伏していた。
お賽銭を入れ、しっかりとご挨拶申し上げながら
なんとなく、なんとなーく違和感を覚えた。

順路を引き返して、摂社を順にお参りする。
みんな立派な神様なんだけど、なんていうか、腑に落ちない。
ミチザネ公のお社の前で、若い女性たちが
「ミチザネってバカ賢かったらしいよ」って言ってて
それは、さすがに笑ってしまった。

それからしばらく、脇から本殿の檜皮葺の屋根を眺めたり
海上にあることで管理がバカ大変そうだなと思いを馳せたりしながら
さっきから付きまとう違和感の正体について、考えていた。


~~~有料記事 跡地~~~


イツクシマの違和感の正体は、構造がヘンなのよね。
ジンジャなのに「寝殿造」という、人主体の造りをしていて
ホコラ(ホ・クラ)としての体をなしていない。貴族のおウチって感じ。

ホコラは、カミを祀る=安全な場所(聖域)であることを
その歴史をもって表すものなのに
こんな管理の大変な場所にカミをお祀りするのは
ジンジャの意義としては、真逆の思惑が窺える。

それは、舞浜にディズニーを作ったり
舞洲にUSJを作ったのと同じノリで
「ここに建てたらめっちゃかっこええやん!」の精神なのだ。
時の権力者であったキヨモリが思い描いた
「ぼくのかんがえたさいきょうの」ってのがイツクシマ。

だもんで、本殿も北向いちゃってるし(正確には北西)
摂社も、西向いたり東向いたりバラバラで
周辺との兼ね合いで、イズモとダザイフのカミも
とりあえずお祀りしとくかって、そんな風に見えちゃうのよ。
なんかだらしねぇなぁ。イツクシマほんとだらしねぇのよ。
台風来たり高潮のたびに修理するの、もうジンジャじゃないじゃん…
異論は認める。異論しかない世界やからな。
ジンジャというよりは、平安時代の最先端テーマパークやね。
イツクシマ出てすぐに立派なお寺もあるしね。
島全体が宗教アミューズメントパーク。平安時代の直島みたいなもんよ。

つまり、ディズニーもUSJも
今と変わらず日本人から愛されて大切にされ続ければ
1000年後にはイツクシマみたいになるってことなので
私たちも歴史の中に生きている、そのつもりで応援したらええんちゃう?
僕もプーさんのハニーハント、大好きやし。あれ楽しいよね。


イツクシマを出て、そのまま宝物館を拝観。
拝観料を取るところは、絶対に入るのが僕のポリシー。
古いオミゴロモがあって、ふむですねぇと思った。

宝物館を出て、地図をひらく。
海のほうに「キヨモリジンジャ」ってのがあって
キヨモリ公の賜物だものねと、お参りさせていただいた。
(調べたらめっちゃ最近の建造で、なぁーって思った)

なんか疲れたから、喫煙所を探したんだけど
フェリー乗り場の近くにしかないらしい。
山の上には「ホウコクジンジャ」ってのがあるらしいが
とりあえず、一服してから考えることにした。

吸いたいかどうかもわからんタバコを吸いながら
船の時間、電車の時間、乗り継ぎの時間を調べる。
このまま、目の前の船に乗ればスムーズに帰れるが
これを逃すと、乗り継ぎがうまくいかず、3時間ほど持て余す。
どうしようかと悩む僕の隣には、ギターケースを抱えた男性が座っていて
そんなもん持ってきてどうすんねんと、思考がジャミングした。

結局、ホウコクジンジャが諦めきれず
さっき来た道を、早歩きでまた戻る。

石段の入り口あたりで、白人の大男たちが
座り込んで酒盛りしながらタバコをパカパカ吸ってて、バカ怖かった。
「そういやチャイニーズ少ないなぁ」なんて現実から目を背けながら
特定の人種がどうこうではなく、行儀悪いやつぁ一定数いるもんだと
無視して一気に通り過ぎた。自分はああはなるまい。

ホウコクのセンジョウカクは、高台の癒しスポットだった。
景観も良く、風が気持ちいい。あぁ、先に来ればよかった。
拝観料100円以上の価値はあったな。来て良かった。
思ったけど、もう帰るつもりだったので、一周してすぐ出た。


行きと同じフェリーに乗り、電車が来るまで45分、ボーっとしてた。
次来る電車に乗っても、糸崎駅で1時間30分待つことになるらしい。
せっかくだから精神で、はじめての広島駅で時間を潰すことにした。

広島駅は、片方の出口は壮絶な工事中で
もう片方の出口は、小ぎれいなホテルとロータリーがあった。
駅ビルで軽く食事でもと思い、ひと通り歩いて周ったけど
どこもお値段がバカ高くて、食欲はどこかへ行ってしまった。

結局、ウロウロするのに疲れて、さっさと電車に乗った。
またあの平坦な山陽本線に揺られるのは、ちょっと気が重くて
せっかくだから精神で、尾道に寄って帰ることにした。


尾道は寂れてるのかレトロなのか、掴み切れない町で
とりあえず、海沿いの道をふらふらっと歩いてみた。
途中に、めっちゃ並んでるラーメン屋があったので
せっかくだから精神で、入って食べた。美味しかったよ。

帰りは、うす暗い商店街を歩いてみた。
地元の学生が、軽快に自転車で走り抜けていく。
普通、商店街は自転車を降りて歩くもんだと思っていたが
車通りの多い道に囲まれたこの町では、そうはいかんらしい。

あとは、もう書くことないっす。
同じ電車に乗って帰って、まぁまぁかなって思って寝ました。
僕からは以上。
また追って連絡し〼。

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