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磁界センサーが捉えた!唐津沖で謎の巨大沈没船を発見〜W.S.P海洋調査プロジェクト

日本列島の北西部、九州と朝鮮半島の間に位置する玄界灘は、日本と朝鮮半島、中国大陸を結ぶ重要な航路として機能してきました。古来から現代に至るまで数々の船が行き交う中、その一部は荒波の中姿を消したとも言われており、これらの沈没船の一部は海底に眠る過去の証人として今もなお存在し続けていると考えられています。

そして2024年6月、ワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)は、九州大学浅海底フロンティア研究センター(菅浩伸教授)との共同調査でこの海域から未発見の沈没船を見つけることに成功。この発見はメディアでも大きく取り上げられ、多くの注目を集めました。

ワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)と九州大学との共同調査

いったい何?水深50メートルを超える海底に沈む謎の物体

調査のきっかけは、九州大学浅海底フロンティア研究センターのグループが海底測量の際に水深50mの場所で記録に載っていない未知の物体を確認したことから始まりました。物体の長さは約40m、幅約8m、高さ約6mと大きく、地形にしては不自然であったことから沈没船の可能性が浮上したのです。

沈没船と見られる構造物が映るデータ(©︎九州大学浅海底フロンティア研究センター)

そして2024年6月。九州大学浅海底フロンティア研究センターによって取得されたマルチビームソナーのデータを基に、沈没船が眠っていると考えられるへ、ワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)が開発した最新鋭の磁界センサー「JIKAI edge AI SENSOR(通称:JIKAI)」を投入する計画が立てられました。地中や水中の金属を高精度で探知するこのセンサーにより、海底に眠る物体が「磁気を帯びる人工物=船」であるかどうかを確認しようという試みです。

操縦テスト〜まさかのトラブル!?

調査の前日、九州大学のプールにてJIKAIを水中ドローンに搭載するテストを行いました。海中でのシミュレーションを目的としたこのテストは、水中ドローンの操作性やデータ取得の精度を確認しながら、現場での成功を確実なものとするための重要なプロセスです。

テスト中、幾つかのトラブルが発生しましたが、優秀なエンジニア陣による夜を徹したメンテナンスにより調整は完了し、無事に調査当日を迎えることとなります。

九州大学の競泳プールにて
JIKAIを水中ロボットに搭載するエンジニアたち
高性能ながらも小サイズなJIKAIは様々なドローンへの搭載が可能

荒海と船酔いとの戦い

当日は対馬海流と風の影響で古来より"海の難所"として知られる玄界灘の洗礼がクルーたちを苦しめました。

途中、大きな漁船が流されて座礁し海上保安庁に救助されているなど、荒れた海を1時間ほど進み到着した調査ポイントは大きくうねっており、安定した停船が難しいほど。普段、海に慣れているはずのクルーたちも船酔い苦しみますが、さすがはプロフェッショナル。大きく揺れる戦場で着々と準備を進めます。

海洋調査は天候との戦いでもある
地元の漁船も座礁するほどの荒波

いざ!JIKAIを海中に投入

同行したスタッフ幾人かが船酔いで脱落していく中、いよいよ準備が完了。停まっていてもすぐに流される船と、水深50mという難しいコンディションをものともせず、JIKAIを載せた水中ドローンが入水します。人間のダイバーでは潜水が難しい場所やコンディションでも、安全に海中調査ができることが水中ドローンの強みです。

水中ドローンと操縦を担当するCTOの市川
水中ドローンを海中に降ろすクルーたち
いざ海中へ!
海中を進む水中ドローン

「ありました!磁気反応が出てる!すごい!」

JIKAIが入水して数分後。船上ではクルーたちが水中ドローンの映像をモニターを固唾を飲んで見守る中、センサーが強い磁気反応を捉えます。さらに、モニターに大きな船の姿が映し出されると歓声が上がりました。

船の姿が鮮明に浮かび上がった

(発見の瞬間はこちらの動画をご覧ください)

このまま「MURAKUMO」によるフォトグラメトリ3Dスキャンを試みようとしましたが、酷くなる揺れにより続行を断念し帰港することになりました。

取得した映像から、沈没船は鋼鉄製で表面は付着物に覆われており、記録にも残っていないことから、沈んでからかなりの年月が経っていると推定されます。船の形状や造られた年代については、引き続き行われる3Dスキャン調査によりより詳しく解明されることでしょう。

悪いコンディションにより限られた時間の中、奇跡的に一回目の投入で沈没船を発見することに成功した今回の調査でしたが、知られざれる歴史にまた一つ光が当たることとなりました。

沈没船発見のニュースはメディアでも取り上げられ、沈没船発見だけでなく、磁界センサーや水中ドローンについても多くの人々の関心を寄せました。

発見の取材を受けるCTOの市川

発見を伝える記事

「JIKAI edge AI SENSOR」の可能性

今回の発見の鍵となった「JIKAI edge AI SENSOR」は、ワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)が数年にわたる研究と開発の末に生み出した革新的な磁界センサーです。このセンサーは従来の金属探知機とは異なり、高いセンサー性能と小サイズ化による機動性、AIによる探知結果解析を可能とし、従来の技術では見逃されがちな微細な反応をも検出できます。

さらに、低消費電力でありながら高い感度を維持することができ、長時間の探索が可能であるということに加え、暗闇や低透明度、遠隔地といった過酷な環境下でも正確な調査を行えるという特長があります。これにより、海洋調査だけでなく、地雷撤去や考古学調査、宇宙探索などにおいても重要な役割を果たすことが期待されています。

JIKAI edge AI SENSOR
様々な分野での活躍が期待される

海の中は新たなフロンティア

沈没船の詳細について本格的な調査はこれからとなりますが、今回の発見は水中調査や水中考古学における新しいアプローチの可能性を示すものであり、今後作成される3Dデータにより、歴史的背景など多くの謎が解き明かされるでしょう。

調査を終え笑顔のクルーたち

ワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)が海洋調査を行う理由は、単なる歴史の発見や資源探査のためではありません。人類がこれまで目にしてこなかった深海の世界にはまだ多くの謎が残されており、私たちは地球上の未踏の領域を解明し、その知見を未来に伝えることに情熱を燃やしています。

ワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)は今後もさらに多くの海洋調査を実施し、深海に眠る未知の世界を探求していきます。私たちの次なる発見がどのようなものであるか、ぜひご期待ください。

JIKAI edge AI SENSORについてはこちらの動画もご覧ください。


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