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ギザの大スフィンクス3Dスキャンプロジェクト〜ワールドスキャンプロジェクトの挑戦

ピラミッドと並ぶギザのシンボルとして人気を博している大スフィンクス。世界的にも有名な古代エジプトの建造物ですが、その歴史は未だ多くの伝説と謎に包まれ、多くの人々の関心を引きつけてやみません。

今回は、私たちワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)と名古屋大学のエジプト考古学者でナショナルジオグラフィック協会のエマージング・エクスプローラーでもある河江肖剰博士による共同調査の内容と共に、ギザの大スフィンクスについてご紹介しましょう。

ギザの大スフィンクス

ギザの大スフィンクスはカイロの西郊外、ギザの砂漠にそびえ立つクフ王・カフラー王・メンカウラー王の三大ピラミッドの近くに建造されました。王権の象徴とされるライオンの体とカフラー王の顔を模した頭部を持ち、王の権威と神性が表現されています。

「スフィンクス」という呼び名はギリシャ語の「スピンクス」が由来で、元々は古代エジプト語の「シェセプ・アンク(生ける像)」が語源だと考えられていますが、古王国時代のエジプトでどのように呼ばれていたのかは判明していません。

他にも建造目的や当初の姿も未だ不明ですが、建造方法においてはモカッタム累層を掘り出して造られたことが判明しています。また、モカッタム累層は硬い層と柔らかい層の交互層からなる岩盤であるため、大スフィンクスの基礎部、胴体、頭部では硬度が異なっているのです。

ギザの大スフィンクス
周囲には石切り場であった痕跡が残っている

夏至には大スフィンクスの背後に並ぶクフ王とカフラー王のピラミッドの間を太陽が沈んでいく荘厳な風景を見ることができ、古代エジプトの人々が太陽信仰をいかに重要視していたのかを感じられる名所となっています。

夏至には大スフィンクスの後ろに太陽が沈む構図となる

このように、今では世界的に有名な大スフィンクスですが、紀元前2500年頃にカフラー王の命令によりピラミッドと同時期に建造が開始されたのち、建造が中断され約1000年もの間砂に埋もれたままだったのです。未完のまま放置された理由は今も謎とされていますが、新王国時代になるとスフィンクス崇拝が始まり、歴代のファラオは大スフィンクスを参拝すると共に、周囲に礼拝堂や多くの記念建造物を築くようになりました。

大スフィンクスの前に建造され、大スフィンクス同様に未完のまま放置されたスフィンクス神殿

トトメス4世の「夢の碑文」

大スフィンクスの周辺に作られた記念建造物の中でも、特に興味深いのが大スフィンクスの足元にあるトトメス4世の「夢の碑文」です。

足元に建てられたトトメス4世の「夢の碑文」

伝説によると、トトメス4世はまだ王位に就く前、狩りの途中で大スフィンクスの近くで昼寝をしました。すると夢の中に大スフィンクスが現れ「砂に埋もれた自分を掘り出してほしい」とトトメス4世に頼み、その見返りにトトメス4世に王位を約束すると言ったのです。

目覚めたトトメス4世はこの夢を神託と捉え大スフィンクスを砂から掘り出し、その後実際にエジプトのファラオとなった際には、大スフィンクスの前に記念碑を建てこの物語を「夢の碑文」として刻みました。

「夢の碑文」にはトトメス4世とスフィンクスの伝説が刻まれている

この伝説から分かるように、スフィンクスは王権の正当性を象徴する存在として信仰を集めていたのです。

スフィンクスと偉人たち

大スフィンクスはエジプトのみならず海外においても高い認知度を持ち、過去にはその姿を一目見ようと歴史に名を残す偉人たちも多く訪れました。

例えば18世紀にはナポレオンがエジプト遠征時に立ち寄ったとされ、当時まだ首から下が砂に埋もれていた大スフィンクスの前で騎乗し、対峙している姿が絵に残されています。

Bonaparte Before the Sphinx(画像提供:Artvee)
https://artvee.com/dl/bonaparte-before-the-sphinx/

さらに、江戸幕府によってヨーロッパに派遣された遣欧使節団の武士たちが、旅路の途中エジプトを経由し、その際ギザの大スフィンクスを訪れています。集合写真を見ると、ほとんどの人物が大スフィンクスの前で並んでいるなか、顎下あたりまで登っている人物もいたりと、その不思議な光景に衝撃を受ける方も多いでしょう。

スフィンクス前で集合写真を撮る池田使節団(国立国会図書館『本の万華鏡』)
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/14/1.html

世界を、未来を、好奇心を、身近に

時代を超えて多くの人々を魅了した大スフィンクスですが、風化や侵食、人為的な破壊により多くの損傷を受け、その姿は刻一刻と変化し続けてきました。そのためワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)は3Dスキャンを行い、大スフィンクスがどのように変化してきたのかを再現しようと取り組んでいます。また、細部まで精密に記録した3Dスキャンのデータは、破損した箇所の再建や修復計画の策定に役立つでしょう。

私たちのプロジェクトはただ単に遺跡をスキャンするだけではありません。精密に記録したデータを研究や教育のために活用することで、スフィンクスのような遺跡が持つ歴史的、文化的価値を広く伝え、未来の世代に受け継ぐことを目的としています。ご興味があれば、ワールドスキャンプロジェクトの活動をフォローいただき、ぜひ応援をお願いいたします。

ギザの大スフィンクスについてはこちらの動画もご覧ください。


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