ウール以外の獣毛たち
2019年の年末に新型コロナウイルスが世界中に広まってから1年半が経とうとしています。いろんな業界が被害をうけましたが繊維業界も例外なく大きなダメージを負いました。衣料品消費が大幅に減退したことでアパレル業界に携わる原料を扱う会社、糸を作る会社、生地を作る会社等がドミノ倒しのように業績を落としました。しかしアパレル業界では今年に入り一部で受注の回復の兆しがでてきているという記事を目にしました。意外な傾向として高級糸ほど回復傾向が顕著との声が上がっています。一般的に馴染みのある糸の原料は綿や化繊といったものですが、ここでの高級糸はカシミヤやアルパカといった獣毛が原料の個性派紡績糸です。日本においてウール以外の獣毛は希少価値が有ありますし、もともと輸入量自体が少ない原料なので馴染みが少ない人も多いのではないでしょうか。そこで一言に獣毛と言ってもいろんな種類がありますのでその特徴を簡単にまとめたいと思います。聞いたことのある繊維、初めて聞く繊維いろいろあるかと思いますがこれで少しでも興味をもっていただけたら幸いです。
カシミヤ
カシミヤ山羊の毛で刈り取られた毛から産毛だけを選別されたものです。
1頭からとれる量は150~250gしかとれず、例えばセーターをつくるなら山羊4頭分の毛が必要になります。毛は細くて密度が高いが軽く、暖かで上品な光沢があります。非常に高価な原料なので「繊維の宝石」と呼ばれます。
繊度:約13~16ミクロン
モヘア
トルコのアンゴラ地方を原産とするアンゴラ山羊からとれる産毛の事です。絹のような光沢をもっており、そのつややかな光沢はカシミヤを超えるとも言われています。毛足が長く通気性に優れていてコシが強いため耐久性があります。冬物限定というよりは年間を通して季節ごとの各ニット製品に使われています。
繊度:約24~40ミクロン
アンゴラ
アンゴラウサギの毛を指します。アンゴラウサギはウサギの中でも最も長毛のウサギです。繊維は絹のように細く手触りは柔らかくて滑らか、色は純白です。繊維の内部は空洞で空気を含むので保温性に優れています。かなりデリケートな繊維ですのでウール等に混紡される事が多いです。ニット製品や帽子などに使われています。
繊度:約12~30ミクロン
キャメル
キャメルにはひとコブラクダとふたコブラクダの2種類がおりますが獣毛としてはふたコブラクダの産毛の事を言います。ひとコブラクダは毛が太く短いので高級な原毛は取れません。キャメルの特徴は天然繊維の中でも1番と言われるほどの吸湿性・保温性です。非常に高価ではありますがキャメルの布団は驚くほど蒸れない、そして暖かいという事でとても優れています。
繊度:15~24ミクロン
アルパカ
アンデス山岳地帯に生息するアルパカ(らくだ科)の産毛の事を言います。手触りはとても滑らかでシルクのような質感、その為上品な光沢があり、保温性が強く、毛玉ができにくいという特徴を持っています。マフラーやセーター、ショールなどに使われます。
繊度:23~30ミクロン
ピキューナ
アンデス山岳地帯に生息するピキューナ(らくだ科)の獣毛です。あらゆる獣毛の中で最も毛が細いのが特徴で、細ければ細いほど高品質とされる繊維の世界では最高級品とされています。1頭からとれる繊維の量は250g~350gで刈り取りは2年に1度という希少性です。そのお値段は製品価格で例えばストールだと50~60万。コートになると高級外車程のお値段になるそうです。
繊度:10~14ミクロン
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