今回は「尾州」についてです。「尾州」とは織田信長が支配していたことで有名な尾張国の別名で愛知県一宮市を中心とした一帯の地域の事です。
尾州は今や言わずと知れた毛織物の一大産地です。糸から織物に加工されるまでのすべての工程がこの地域に密集しているのが特徴です。その為、多品種を少量でも短納期で生産する事ができ、昔から絶えず栄えてきました。この地域で国内生産量の約8割の毛織物が生産されています。
そんな日本の毛織物の一大産地で有名なのが「ウール」です。ここで作られる尾州ウールは全国シェアの70%以上を占めているイタリアのビエラ、イギリスのハダースフィールドと並ぶ毛織物の世界三大ウール地の一つでもあります。ブレイクのきっかけは1914年第一次世界大戦がはじまって、ヨーロッパからの毛織物が回ってこなくなり、尾張はウールで行こう、となりました。そしてもう一つのブレイクは第二次世界大戦後で好景気を謳歌しました。ただ、平成になるころから中国産や韓国産の安いウールが入ってきて状況は変わってきます。そして現状、安いものは外国産の物にとられています。しかし技術の高い物、高品質な製品についてはどこにも負けません。
尾州毛織物で作られた高級スーツの耐久性は非常に優れており、へたったりよれたりといった事がありません。良いものを長く着るというのはエコでもありますし、長く着れる分場合によっては安いスーツを買うよりもお得になる事だってあります。
しかし現在この尾州の産業は様々な課題をかかえています。海外から安価な製品が入ってくることによっての市場の縮小や職人の高齢化、また後継者問題など様々な課題によって地域全体がかつての活気を失いつつあります。
日本が世界に誇る毛織物の一大産地です。もっと世の中に広く認知されるべきだと思います。繊維業界では尾州が毛織物の産地であることは有名ですが一般の消費者からしてみればその認知度はまだまだ低いのではないでしょうか。世間に流通している国内メーカーの製品や海外の高級ブランドの製品も尾州で作られた毛織物を採用しているのですがその事を知らない方がほとんどです。実際に尾州でスーツまで仕立てているわけではないのでその認知度が低いのも仕方ない事かもしれません。しかし、かつての活気をとりもどす為にまず第一歩としてアピールが大事ではないかと思います。
皆さんに少しでも尾州に興味をもってもらえたらと思い、今後も定期的に尾州の情報を発信していきたいと思います。