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【追憶の旅エッセイ #58】極寒のカナダ横断中、暇つぶしでピアスを開ける
何度も書くけれどカナダのハイライトは、カナダの旅を全て終えた後でも、オーロラに尽きる。
それ以外は本当に大小の違いはあれ、おまけみたいなもの。
加えて冬のカナダでは、旅の魅力は半減する。
スノーボードやスキーが好きならバンフなどに籠ってスキーリゾート暮らしをするのを強くお勧めする。それこそが冬のカナダの正しい過ごし方のひとつだろう。
さて、でも一度出てしまった旅は戻ることはできないので、そのまま横断を続ける私。ちなみに西のバンクーバーから出発して横断するということは、もちろん目的地は東の都・トロントだ。
その道中に立ち寄ったいくつかの街。メジャーではない内陸部の都市は、どこも似たり寄ったりなところがある。
例えば駅やショッピングモールなどが、巨大な地下街やモールで繋がっていて、セントラルヒーリングのおかげでとにかく室内は温かい。とか、市内を流れる大きな川はすべからく凍結していて、神秘的な雰囲気を醸している、とか。そしてなぜかユースホステル(カナダでは「HI」と呼ぶ)がこれまたすべからく長距離のバス停から遠い(当時は)、とか!
そんなわけで、どの都市でも印象が似通っている。
後は、宿によって出会う人が違うおかげで、その街ならではの思い出ができたりできなかったり、そんな風だ。
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そんなだからか、刺激が欲しくなったのかもしれない。もしくは時間を持て余して暇だったのだろう。
ある街、記憶ではたぶん、ウィニペグだけど、例によってモールを散策していたら思い立って入った「Claire's」で、ついピアスを開けてしまった。
そう日本にもあり、ハロウィン時には本領を発揮する、あの「Claire's」だ。
最初はピアスを開けるキットを購入して、宿で自分で開けるつもりだったのだけれど、それを聞いたらスタッフのお姉さんが「ここでも開けれるわよー」と言う。色々手間も省けるか、とお願いすることに。
右1つ左2つは高校卒業記念に開けたので、今回また左右にひとつずつ。結果、小さな耳たぶに計5つもピアスの穴が開くという…。
「ピアスで開運」を信じていたわけではなかったけれど、何だか単調な旅路を変えたくて「運の流れに変化を!」という想いは確かにあったかもしれない。
「パチン!」と大きな音と共に耳に穴が開いたら、何だかスッキリした気分になったのは確かだった。
ただ一点、ファーストピアスはいくつかから選べて、私は自分の希望を伝えたのだけれど、気づいたら小さなパチンコ玉みたいなのをつけられていたのが残念で…。リクエストしたのは小さなダイア粒みたいに見える、ジルコニアだったのに。
「え、違う、これじゃない」と言っても後の祭り。「あらそうだったっけ、でも数週間で変えられるから!」とあっけらかんとお姉さんは言う。
最初の2週間ほどは確か、そのファーストピアスをつけたまま消毒をして過ごすので、それが(パチンコ玉かぁ)と思うと少し気分は下がったけれど。
というわけで、2週間後すぐにつけ替える予定の、可愛いお気に入りのピアスも一緒に買って店を後にした。
店に入ったときと出たときのピアスの穴の数が違うというだけで、どうしてあれほど生まれ変わったような気持ちになれたのだろう。女の子の不思議なのかもしれない。
そんな風に清々しく、鼻歌が漏れるほどご機嫌な私で、宿へ戻ったのだった。
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