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【世界一周・旅のカケラ #41】2人で過ごせる本当に最後の一日、23歳の誕生日を祝う

ジョンの記念すべき誕生日、彼の望み通りひげを剃って(※下記参照)さっぱりとしたイメチェンフェイスで迎えることができた。

※ジョンって誰?という人はこちらをチェック!

誕生日とはいえ、お互いの旅の出発直前だ。特に大きなプランはない。
朝はいつもの食堂でヌードルを食べて、いつものカフェでコーヒーを飲んだ。
いつもと違うのは、その後に「いつも食べるアイスクリーム屋さんもいいけれど、今日はエアコンの効いた部屋で食べようか!」と私の提案で、ランバトゥリ通りの端にあるチェーンのアイスクリーム店に行ったこと。

そのときの写真が一枚だけ残っている。ジョンがローソクの火花が散るアイスケーキを大切そうに両手で抱え、その彼の肩を抱く私。なんだこりゃ、立場逆じゃない?笑
にしても、一ピースのアイスケーキに一本のローソク。誕生日と言ったからサービスしてくれたんだっけ?その辺の記憶はあいまいだ。でも彼はとても嬉しそうにしていて、私は彼のボディガードのごとく強そうに見える。その日の記憶は、その一枚で十分だ。

その後、彼はまた最後のバイクの調整に出かけて行った。
待っているあいだ、何度も別れのことを考えてしまう。明日の今頃はもう離れ離れになっている。何度も再会を重ねてきた今までとは違う。今度は本当にさよならだ。その事実がずんと重く私を覆うようにのしかかった。

本音は、もっと一緒に過ごしたい。つまらないことで笑ったり、真剣に語り合ったり、たくさんじゃれ合って、彼を見ていたい。一番近くで。触れていたい、手が届かなくなるまで…。
今の私は、水分を含み切ったスポンジみたいに、どこをつつかれても涙が溢れてくる始末だった。

しばらくして、バイクの修理で油まみれになったジョンが戻って来た。「明日出られるかな、ちょっとトラブって」とぶつぶつ言っていたが、シャワーを浴びると切り替わったようにシャキッと様子で、「ご飯食べに行こうか、どこかいいところ!」と言った。

いいところかはわからないが、私がランバトゥリを歩きながらいつも気になっていた店を提案した。ガーデンレストランのような、木々がそこかしこに茂る好みの空間だった。そこで、Yちゃんがくれた「サヨナライツカ」の本に登場する、プーパッポンカリーをメインに注文した。

が、プーパッポンカリーが到着してすぐ、私の調子が優れなくなってしまった。たぶん、理由は悲しみだ。料理には少し手をつけたものの、何となく気分が優れない。味なんてもちろんわからない。
ちなみに今でも私はタイ料理店で、プーパッポンカリーを好んで頼むのだが、その理由はこの話に起因している。

ジョンに不調を伝えると「何か温かい物飲む?」と気遣ってくれたが、私がその優しさに触れ、盛大に泣き出してしまったから「うん、一旦部屋に戻ろう。お会計は気にしないで」と言ってスマートに支払い、私をエスコートして店を出た。
せっかく大好きな人と彼の誕生日に、美味しい料理を食べに来たのに。そして彼とのディナーはもう二度とできないのに…!そんな悔しい気持ちでさめざめと泣きながらいつもの道を、部屋まで歩いた。

部屋に戻り、ひとしきり泣き、彼に気持ちをぶつけ、何度も繰り返してきた会話をぶり返した。そうこうしていると、私は少し落ち着いてきた。
その様子を見届けて彼は、さっきから永遠に鳴っているママからのバースデーコールを取った。イタリアンらしい、ハッピーなトーンの会話が聞こえてくる。私もこないだ会ったママさんと少し話すことで、気分はさらに明るくなり、ジョンもホッとしている。

気を取り直し、2人最後のバンコクを楽しむため、再びランバトゥリに戻る。屋台でちょこちょこ食べ歩きをし、結局いつものバー「ガソスタバー」で飲むことにした。正直、お酒でも飲まないとやってられないと思ったのだ、お互いに。
気持ちよく酔ってまたは酔ったふりをして、しんみりは持ち出さず、笑って過ごした。明るくいることで私は自分を保っていた。さっきみたいな失態をする時間は、もうない。

そして一緒のベッドで眠る、最後の夜。
彼はさまざまな疲れから先に寝落ちてしまい、私はひとり暗闇の中で彼の寝顔を眺めていることしかできない。いつもは逆だったのに、最後に見届けられてよかった。
そして彼の温もりに包まれ、最後の眠りに落ちた。

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