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【世界一周・旅のカケラ #12】Yちゃんが残してくれた言葉と一冊

よく夕食を食べに行く、ある安宿に併設された食堂で、Yちゃんという女の子と知り合った。

知り合った、というより私が勘違いして声をかけてしまったのがきっかけ。なんとなくどこかで知っていた気がしたので、そのまま「前会ったことあるよね?」と、要はナンパだな。

まぁ、それは私の勘違いだったのだけれど。結局、その食堂ですでに顔見知りになっていたKというイギリス人と3人で意気投合し、仲良くなった。

ちなみにその日は、奇しくも、私が旅に出て即効恋に落ちたジョンからラブレターをもらった、まさにその日。

つまり、バンコクに着いてわりとすぐに出会ったことになる。

彼女はまだ大学生で、アメリカに留学中。その夏の休暇を使ってバンコクにやって来たのだった。

彼女とはほぼ毎日、日中カオサンを隈なく散策して過ごし、ときには夜遊びもした。

一度は「カオサン脱出!」と題して、一緒にシーロムまで行きタイの名物のひとつ、女の子がエンターテインしてくれる「ゴーゴーバー」や、通称「日本人街」として知られるタニヤ通り界隈を冷やかしながら歩き、最後には「スワン・ルム・ナイトバザール」というバンコク随一のマーケットで遊んだ。

そのどれもが観光っぽくて、カオサンに生息している私たちには新鮮で大はしゃぎしたっけ。笑

私がカンボジアに行っているあいだには、彼女もちゃっかり恋に落ちて、カオサン通りのあるバーで働く現地人と、濃密な日々を過ごしていたみたい。

なかなかのイケメンだったのを私も覚えている。なんせ、Yちゃんは自他共に認める「イケメン好き」だから、それはもう清々しいくらいに。笑

ちなみにYちゃんは、結局、このひと夏の経験でバンコクに縁を感じたらしく、バンコクの日経企業に就職して約10年住むことになる。その彼の存在も、きっと彼女をこの地へと導くのに大きな理由になったに違いない。

でもこのときはもちろん、そんな未来はまだ知らない。

半月ほどバンコクで過ごして、彼女はアメリカへ帰ることになった。

別れ際、Yちゃんは私に一冊の本をくれた。

辻仁成著「サヨナラ イツカ」だ。

この本の一ページ目に、彼女はメッセージを書いてくれた。それは私にとって宝物みたいな文章なので、一部引用したいと思う。

「バンコクでみあさんに出逢えて、よかった。これからの旅にもすばらしく美しい出逢いがめぐりますように。沢山の愛がふりそそぎますように。世界のどこかでまた逢いましょう」

Yちゃん

今見ても、泣けてくる。

彼女の素直で力強い人柄が滲み出た直筆も、その温かく愛に溢れた文章も、私の心に強く響くものがある。

あの頃の私の目の前には、まだ途方もない世界への道のりがあった。

あれから時間が経ち、彼女とは世界中の至るところで再会を果たした。でもこの文章を読むと無償に、このときのYちゃんに会いたくなってしまう。

しっかりとハグを交わし、彼女はカオサンから空港へ向かうバスに乗って去ってしまった。

そしてこの「サヨナライツカ」は、私のその後のバンコク滞在だけでなく、私の旅そのものを一色に染めてしまうほどのインパクトがあった。

改めてYちゃんに、ありがとう。

あなたのおかげで、私の旅に、そして恋物語に色がついたのだから。

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