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【世界一周・旅のカケラ #40】誕生日前夜、気ままなドライブとハプニング

世界一周に出て、すぐに出会ってしまった最愛の人・ジョン。

バンコクのカオサン界隈で過ごした数か月は、もう終わりを迎えようとしている。この記事と併せて3話の予定なので、あと少しおつき合いいただけると嬉しいです。

※ジョンって誰?という人はこちらをチェック!

出発は私のタイの観光ビザが切れるタイミングで、ちょうど旅に出て2か月になるところだった。彼の出発は、本当はもう少し前だったのだが、私と誕生日を祝いたいと延長してくれていた。

ジョンの23歳を一緒に祝える、それだけで私の心は温かくなる。
というか、何、出会ったの22歳だったわけ⁉ 学生に毛が生えた程度やん!と言いたいが、バイクひとつで世界をひとり旅する彼は、研ぎ澄まされたセンサーと、ちょっとしたことでびくともしない落ち着きがあった。
私もそのとき、オーストラリア北米の2年の旅を終えていたにもかかわらず、4つ年上の私の方がより幼く思えたものだ。

さてこの日は誕生日の前日、出発間近の彼は日中バイクにかかりきりだった。彼が戻ると、お気に入りの屋台でラーメンを食べてから、カオサン通りを冷やかして歩いていた。すると彼は、突然言った。
「何か遠くへ行きたい気分なんだ。これからバイクで、気の向くままドライブしてどこかのローカルな場所で、デザートでも食べて帰って来るのはどう?」
こういう名案を思いついたときの彼は、まるでいたずらっ子のように目をキラキラさせている。いいね、私、そういうの好きよ(by ウルスラ)。笑

すぐに用意して気の向くままバイクを走らせていると、午後8時、渋滞にぶつかった。
が、タイだけでなく東南アジアの傾向だけれど、車は止まってもバイクはその間を抜けてガンガン前に進んでいくのだ。バイクで世界を旅するジョンにとっても、そんなこと朝飯前、という風に隙間を見つけては突っ込んで進んでいく。600ccのバイクは、スクーターが多いバンコクの道路でかなり大きい。私はそんな彼の頼もしくも無鉄砲な運転のバイクに、なすすべなく乗っているしかなかった。

しばらくして渋滞を抜けると、見慣れた場所に出た。ルンピニ公園だった。そこで彼に「この公園の向こうに、ナイトバザールがあるよ(ローカルスポットではないけれど)」と一度Yちゃんと来ただけのマーケットを思い出しながら伝えると「行ってみる?」とそちらへ走り出した。

バザールに着いて、一目見るなりジョンは目を一層輝かせて「miaはいつも、バッチリの場所へ連れてきてくれる!」と喜んでいる。
そんな様子にいちいち私はきゅんとなる。可愛いやつめ。笑。数日後に別れが控えているとはいえ、私たちはまだ出会ったばかりでお互いがお互いのことを純粋に「好き」でいられる、幸せな時期だった。

さてナイトバザールだが、以前Yちゃんと来たときと別の入り口から入ったため、今回はまた違う角度からこのナイトバザールを楽しむことに。

アンコールワットを模したような建物が門となり、そこを抜けるとステージやかなり大きいテーブル(飲食)スペースが広がっている。
さらに観覧車や急流すべりなど、遊園地のようなアトラクションまであるではないか!ちなみにこういうマーケットのアトラクションは、私はいつも背景として楽しむ程度なのだが、好奇心旺盛なジョンがそうさせてくれるはずもなく。「mia、あれ乗るよ!」「こっちも試そう」と、気づけばチケットが購入され、ならば!と、全制覇するはめに。想像以上に本格的で、乗ってよかったと私もホクホクになった。

この人は何でもない日常をワクワクするものに変えられる。ジョンはそういう人だった。それは私が好きだから、だけではなく。周りにいる人がいつも笑顔になるのを、たった数か月だけど近くで見てきた。まるで彼の純粋な好奇心や喜びが伝染するみたいに。それってとても豊かなことだ。

そんな風に楽しんだ後、雨が降りはじめたのでステージ前の広場で、チップスやピザをつまんで雨宿りして過ごしていたのだが、雨足は強くなるばかり。腹ごしらえもしたことだし、と立ち上がり、彼は近くの屋台のスタッフにごみ袋を2枚もらってきた。そこに頭が通るほどの穴を開け、「はい、被って」と差し出されたものをそのまま被った。頭は濡れるのだが、体だけは雨から守れるスタイルだ。

そしてバイクにまたがり、雷雨の中、我らが部屋に急ぐ。雨粒は大きく、彼の視界を遮らないか冷や冷やしながら、それよりも私は耳元で鳴り響くほど大きな音の雷におびえ、彼に掴まって来たとき同様、ただ彼を信じて乗っているしかなかった。

宿に帰り、さっそく熱々のシャワーを浴びた。彼の番になり「23歳の記念にヒゲを剃る」と言っていた彼は、なかなかバスルームから出てこない。何にそんなに時間がかかっているのかわからないが、彼も彼のしたいことがあるに違いない。気にはなるけれど、そっと待つ。そのあいだに彼は誕生日を迎えていた。23歳を一緒に祝うつもりが、彼はバスルームにこもっている。

「ジョン?」。声をかけてみると、出てきた彼のタオルには…血が。それも結構真っ赤やん…!「俺はばかだ、結構深く切ってしまったから、血が止まらなくて」とジョン。見せて、というと「Noooo」と断られる私。止血のためにあごを強く抑え過ぎたためか、何となく血の気のない青紫みたいな色になっていた。珍しく意気消沈した彼を見て、何だかまた愛おしい。笑
だって、せっかくかっこよく登場したかったのに、失敗したんだよね。だからちょっと悔しかったんだろうな、なんて想像して。

そんな、23歳になったばかりのジョンの話、ここで初めて書いた。いつもかっこよく頼もしい彼の、ひげを剃って血まみれになっていた話を。笑
それにしても、ひげを剃ったことで一段と若々しくなってしまったジョン。明日は、丸々彼と過ごせる最後の一日だ。泣いても笑っても最後。

なら、どう過ごす?どんな私を彼の記憶に刻みつけてもらいたいだろう。

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m i a*旅する自然派ライター|エッセイスト
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