【世界一周・旅のカケラ #15】パーティー島に来たのだから…パーティーーー!
世界一周に出る前、日本で旅行雑誌の仕事をしながら、毎週末クラブ通いという暮らしをしていた。
私は決して、夜遊びをしていると聞いてイメージするような風貌ではない。でも純粋にお酒と踊るのが好きな、自他共に認める「パーティーガール」だった。
フロアの高揚感のなか、アドレナリンにまみれて踊り狂う週末。
旅に出た途端、バンコクで恋沙汰にすべてを費やし、すっかり忘れかけていた感覚。
そうこれよ、これ!
パンガン島はフルムーン(満月)パーティーだけではなく、ブラックムーン(新月)やハーフムーン(半月)と、理由をつけてはパーテイーを行うパーティーアイランドだった。
ビーチでは毎夜何かが催されているようだけど本祭、つまりフルムーンの盛り上がりはすごい。
コ・サムイ、別の島からもボートでやって来る人、人、人。
きっとパンガンの宿が満室、もしくは値上がりしたため別の島でリーズナブルに滞在しながら、パーティーのときだけやって来るスタイルを取ったのだろう。
ビーチ沿いに並んだバーやクラブはドアを開け放ち、ガンガンに音楽を流している。私たちはそれらのなかから、ピンと来るものを選んで入れば良かったし、なんならその前のビーチで音楽に耳を傾けて飲んでいても良かった。
ビーチはどこまでも巨大なひとつのクラブと化していた。
奔放なパーティーの様子に、私の心は久々に弾む。
ジョンとのわかれを、このときだけは忘れて目の前の興奮に飲み込まれていった。
ビーチに並ぶのはバーやクラブだけでない。
暗闇で光るペイント(蛍光塗料)を塗ってくれるスタンド、サンドイッチやホットドックを売る屋台も。
そうそう、フルムーンパーティーの風物詩と言えばバケツドリンクで、そのお店もずらり。バケツに好きなアルコール、レッドブル×ヴォッカなどを組み合わせたものだけれど、それにストローを挿して飲むスタイルだ。
量を飲みたい吞兵衛にはピッタリだし、とにかくイギリス人が多いから、彼らにとっては夢のようなのだろう。
値段は確か150~200バーツ(600円弱)で、ひとりではとうてい飲み切れない量だ。
私も今回の相棒、イギリス人のKと一緒に飲んでみた。バケツにストローを2本差す恋人飲みだけれど、彼とではまったくロマンティックな気分にならない。苦笑
それでもそれなりに楽しい。皆の気持ちが「楽しい!」って浮足立っている場所では、私もそれに呼応しているようだった。
*
ただ一点、とても納得いかなかったのが、私とKの関係が現地のプロスティテュート(売春婦)とイギリス人のカップルみたいに思われていたことだ。
私は日焼けしやすく、すぐ黒くなる。おまけにタンクトップにデニムのショーパンだから現地人にすぐ見間違えられる。なんならKと待ち合わせる前に、タイの男の子からタイ語でナンパされたくらいだ。
でもこれが、白人と私の組み合わせになるとどうしても、そういう関係に見えてしまう。
ちなみにジョンといるときも同じ感じだったのが、笑えた。
タイにおいてプロスティテュート、と言っても色んなスタイルがあるようだから、一応残しておく。日本で言うと「寝るだけ」かもしれないけど、東南アジアでは一緒に過ごすためにお金を払う、カップルとして振る舞う、みたいなのもよくある。
でも大半が白人のおじさんと、アジア人の若い女の子なんだけどな。私は確かに若かったけど、相手も同じくらいか私より若かったのに。笑
今となっては確かめようもないけれど、私はどうもそれっぽく見えた…のだろうか(相手も若いんだけどな!笑)。
別に傷つかない、笑って済ませる範囲だし、何よりネタだけども。
ただ、そんなだからフロアで色んな人に合流して踊りたかったのに、なんとなくうまくいかなかったのはつまんなかった。
というのも唯一の相棒であるKが、ただのザルなのか、いくら飲んでもいつまで経っても素面だから。パワー全開で踊り狂う私を、素で見る彼の図のシュールさと言ったら…。苦笑
*
パンガンには3泊ほどして、毎晩パーティーには行ったけれど、もうそれで十分だ。
パーティー、ご馳走さま、お腹いっぱいです。
旅においてどこへ行くかはもちろん大事、でも誰と行くかは、きっと想像以上に大事だったんだな。
ジョンと離れ離れになった直後、傷心の私にとっては特に。
でも人生の経験として、大阪でもパーティーの常連だった私にとっては、来て良かった。ひとりじゃさすがにもっと微妙だったから、それでもKには感謝しているよ、ありがとう。