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【追憶の旅エッセイ #100】2年目の旅の終わり、イングリッシュベイで訪れた象徴的な瞬間
真冬の極寒のカナダを横断したり、悲鳴が止まらないようなオーロラに出会ったり、野生の勘が蘇るようなアドベンチャーをしたり、カナダを中心に北米で過ごした一年間。
バンクーバーで過ごす数日のみを残し、オーストラリアに次ぐ私の2年目の旅は終わった。
この頃の私は、世間の目をうんと気にしていたから、一年目より二年目を有意義にさせたい、もっともっと成長しなきゃと望んでいたと思う。
だけど旅においては2年目になると、経験値が上がるからちょっとやそっとのことでは成長を感じられず、そのもどかしさが極寒の中、マグマのようにふつふつと煮え立ったのがトロントだった。
それは一言でいうと「スランプ」の日々。
カナダでこれからも役に立つ新しいキャリアを身に付けて、海外生活を謳歌するのだ、という出発当初の意気込みももう、途中からは見なくなり旅に夢中になっていった。
だって、やっぱり旅はいいものだから。
旅をすること、し続けることを私が自分に誇れずにいたのは、どこかで「いつまでも遊び続けて」「好きなことばっかりして」という大人たちの言葉を真に受けていたからに違いない。
「好きなことばっかりして」なんて、今や極上の褒め言葉でしかないくらいなのに!
頭で考えるともやっとすることがあっても、それでも私は本心が求めるまま旅をし続け、無事にスタート地でありゴール地でもあるバンクーバーの地を踏んだのだった。
バンクーバーは今までも何度も訪れた、私にとってはすっかり馴染みの場所。ここに戻ってきた時点で、私の旅は終わったも同然だ。
最後に会うべき人にあったり、連絡をしたり、日本へのお土産を買ったり、荷造りをしたり…。
そんな最終準備の合間に、ふと思い立って向かったイングリッシュベイビーチ。
スタンレーパークといえば地元民にとって憩いの場で、ほぼダウンタウンにある巨大な公園だ。半島のような地形なので、ビーチサイドをローラーブレイドやサイクリングで楽しむこともできる。
その日私は、まるで呼ばれるようにスタンレーパークのイングリッシュベイビーチまで歩き、空いていたベンチに腰をかけた。
ちょうど夕暮れどきで、視界の先に大きくて真っ赤な太陽が、空と海を同時に染め上げながら沈んでいくところだった。
あぁ、涙が出るほどきれいだな、美しいな…。
(ただ美しいから、素晴らしいからというだけの理由で、それらをただ見るために旅を続けることは、そんなにいけないことなのかな)、ふと頭の中で疑問が生まれる。
その答えは次の瞬間に、頭を、ハートを力強く貫いた。
「いいに決まってる!」
そして思った。
「あぁ、もういいや、旅をしよう!したいことが旅だ、それ以外はおまけのようなもの。それでいい!」
いくら友人や家族など、身近な人が思いやりを持って言ってくれてもだめだったのだ。
でも私が、私自身が心のそこから自分を認めたことで、「好きなこと(=旅)だけをする私」を許せた、そんな瞬間だった。
このできごとは今でも、私の旅ライフのなかで象徴的な瞬間として、感覚ごと記憶に残っている。
このときに私の、ひとつのぶれない軸ができたのだと思う。
以来本当に、旅でも仕事でも恋愛でも「旅」以外の部分でうまくいかないことがあっても、まったくびくともしなくなったのだから…。
完
***
追憶の旅エッセイ2年分の、今日が最終回です。
お読みいただいた方、どうもありがとうございました!当時の風や匂い、溢れる想いを引っ張り出し、まるでタイムトリップしたように夢中で書きました。幸せな時間でした。
ですが、旅エッセイはまだまだ続きます。2年目が終わって気持ち的にやっとスタートラインに立ったくらいですから。苦笑。
次は世界です、乞うご期待ください!
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