見出し画像

#43 恐るべし質問力

 Tさんという方の話に少し興味を持ったので紹介します。この方は、ある日本の生命保険会社の営業をしている方です。「MDRT」という組織があるそうです。「Millon Dollar Round Table」の略で1927年に発足した世界67ヶ国500社以上で活躍する、43,000名以上の会員を有する、卓越した生命保険と金融サービスの専門家による国際的かつ、独立した組織だそうです。教員には全く縁もない団体だと思いますが、簡単に言うと世界中の「凄い保険営業マン」の人たちの集まりということになるのではないでしょうか。
 その、「凄い保険営業マン」4万3千人の中で、「TOT(Top of the Table)」と呼ばれる人たちが200人いるそうです。「トップ オブ ザ テーブル」です。これは「凄い保険営業マン」の中の0.5%だそうです。そうなると、「超超凄い保険営業マン」ってことになるかと思います。
 Tさんはその「TOT」の一人だそうです。北海道の方ですが、少なくとも北海道ではたった一人です。そのTさんはこう言っています。「幸せ過ぎて、今死んでもいいと思っています。」
 「保険の営業マン」について一般的には、どちらかというと「大変そう」なイメージだと思います。営業ノルマがあって、日々、営業に駆け回って保険を売り込んで・・・。そんなイメージを我々は持っています。以前のTさんは名刺を出すのが嫌だったそうです。初対面で会った人に保険会社の名刺をだすと、それだけで嫌な顔をされるからです。
 まだ一言も「保険入ってください」と言っていないのに、名刺出すだけで「ごめんなさい。保険には入れないの」などと言われたりするそうです。だから、初対面の人に名刺を出すのが本当に嫌だったそうです。これは、ある意味切ないことだと思います。自分がしている仕事を隠すようで、そんな人生は辛いと思います。当時、Tさんはある勉強会に所属していたそうです。先生はとても厳しい方だったそうです。その頃のTさんは、保険の契約でいうと、かなりの契約数を誇っていて、契約数で言えば、札幌ナンバーワンの営業成績だったそうです。
 そんなときにその厳しい先生に突然、次のようなことを言われたそうです。

「君ね、そこそこの仕事をしているようだけど・・・このままいったら・・・ 間違いなく、地獄に落ちるよ」

 いきなり、「地獄に落ちる」と言われたらみなさんだったらどうします?
普通だったら、「何をこの人はいきなり言うんだ!失礼な!」と思うと思います。「こんな人の話はもう聞かない!などと普通の人は思ってしまうはずです。でもTさんは、「そのとき、僕はイラっとしながらもひとつの質問をすることができました。あの時の質問をできたことを僕は自分で自分をほめてあげたい」と述懐しています。

その質問とは・・・「なぜですか?」のひと言です。

 この質問ができたのは大きいと思います。その場で、イラっとして席を立っていたら、今のTOTのTさんはいなかったはずですから・・・。
そしたら、その先生は答えてくれたそうです。

「君には知性が感じられない」と。

 「地獄に落ちる」の後は「知性が感じられない」と言われたわけです。 普通なら、もうダメです。「なんて、失礼な人だ!」って思って、もうこの人の話なんか聞いていられない!となってしまうはずです。しかし、Tさんは、なんとか振り絞って次の質問をしたのだそうです。

「どうしたらいいですか・・・?」

 これ、簡単なようでなかなかできないと思います。逆にいうと、この質問ができたらもう大丈夫だと思います。それは、きっとTさんはこの質問をするときにおそらく覚悟を決めていたのではないかと思います。「どうしたらいいですか?」の答えとして何を言われても、それをやるという覚悟を決めていたのだと思います。
 その答は、

「読書をしなさい。君はあまり本を読まないだろ?だから、君からは知性が感じられない。読書をしなさい。読書をして、知性が身につけばもっともっといい仕事ができるようになる」

 そんなことを言ってくれたそうです。その頃のTさんは本なんて読んだことなかったそうです。でも、それを機会に読書をするようになって、今では月に1回、読書会まで開いて仲間で集まって勉強会をしているそうです。
「あの質問ができた自分を褒めたい」振り返ってTさんは何度も言っています。この話は、読書が大事だという話ではありません。質問が大事だという話なのです。私が言いたいのは、何をしゃべるか以上に何を質問するかが大事だということです。
 ここからがおもしろいのですが、Tさんは保険の営業で売り込みは一切しませんと言っています。しているのは「質問」だけだそうです。Tさんの専門は「相続・事業継承対策」です。ですから、お客さんは社長さんとか経営者の方が多いそうです。その社長さんに聞く質問は例えば、

「あなたが社長を引退した後、この会社を残したいですか?それとも、整理したいですか?」

 ほとんどの社長さんは「もちろん、残したい」と答えます。
次の質問は「それはなぜですか?」です。Tさんは言っています。この質問をしてすぐに答えが出てくる社長さんなんてほとんどいないそうです。みんな、「なぜ・・?」って考えるそうです。
 そこで初めて気づくそうです。たとえば、「そりゃ、父親が苦労して作った会社です。それを私の代で潰すなんてできません。」すると、「お父さんはどんな思いでこの会社を作ったのでしょうか?」そんな質問をします。そしたら、いろんなことを話してくれるそうです。Tさんはそれをただ聴いているだけです。
 Tさんはこう言っています。

「質問」の凄いところは相手が気づいていないことまで気づかせてしまうことです。

 そうすると、「Tさん、あなたと話しているだけでなんか、モヤモヤしたものがスッキリした!」なんて言ってくれるそうです。「ちょっと、その事業継承がうまくいくようなアドバイス、もらえないかな。そんな保険の商品はないの?」などと、ひと言も売り込みをしていないにもかかわらず、保険の契約が次々と決まっていくのだそうです。

 凄いですね。「質問力」。
 ただここで大事なことは、Tさんと同じ質問をすれば、 同じ結果になるかというと、多分、そうではないと思います。これもTさんが言っていることですが、TOTになろうと思うとある一定以上の契約数をクリアしないとなれないわけです。そうすると、一般の人は「どうしたら契約をたくさん取れるか・・・」と、方法論ばかり考えてしまうそうです。確かに、それでも一時的には契約は多くとれるかもしれませんが、それだけで長続きするほどあまい業界ではないと思います。

大事なことは

「TOTとしてふさわしい人間になること」

 これがTさんの究極の答です。結局はそういうことなのです。教師にも通じるところがあると思います。「授業がうまい教師」「話が上手な教師」などなど。でもTさんと同じように考えて教師に当てはめるならば、大事なことは、

「教師としてふさわしい人間になること」

ではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!

Net Works
よろしければサポートをお願いします。これからもみなさんに読んでいただきよかったと思っていただけたり、お互い励まし合い、元気が出る記事が書けるよう有効に使わせていただきます。