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#39 愛の反対は?
日本人として生きていく上で、避けて通れない自然災害には、台風、集中豪雨、局地的雷雨、高潮、洪水、地震、火山の噴火、渇水のよる水不足、大雪、土砂崩れなどがあります。また夏には高温による熱中症などの危険があります。そして、これは日本だけではありませんが、ダメ押しのごとく起こった今回のコロナウイルスによるパンデミック。
誰しも災害は避けたいと思いますが、災害が起こるたびに、多くの人々が普通の日常生活を出来ることがいかにありがたいことか身にしみているのではないでしょうか。スーパーから品物がなくなる、停電になる、水道が止まるなどの直接自分の生活に被害が及んではじめて、自分の生活が自分と直接かかわりのない多くの人々に支えられていたのか、改めて思い知らされているのは私だけではないと思います。
私たちのくらしは、ひと昔前より確かに便利で快適になりました。しかし、それと引き替えに人とあまり関わらなくても生活していけるようになりました。しかし、それは隣りに住んでいる人がだれかわからなくても、隣りの人と助け合わなくても生きていける「いびつな社会」です。なぜいびつな社会かというと、そのような社会は災害などの個人レベルでは解決することが難しい課題に直面すると、すぐにその脆さを露呈してしまう社会だからです。
以下の内容は「本当の豊かさとは」の記事にも載せた内容ですが、
アメリカの大学のチームがTV番組である実験をしました。コンゴの奥地に生息している野生のチンパンジーの群れの中に、食べきれないほどの餌をしばらくの間、人間が意図的に置き続けたのです。すると、チンパンジーの社会はどうなったと思いますか。これまでにたまにケンカはあっても群れの中で助け合ってお互い仲良くくらしていたチンパンジーの間で、殺し合いが始まったのです。物質的に豊かになり、餌を得るために協力する必要がなくなったチンパンジーの社会は、食べ物の心配がなくなり、生活が豊かになったのと引き換えに崩壊してしまったのです。生活することが自己完結できるようになると、他者は必要なくなるどころか、むしろ信用できない「敵」となり、コミュニケーションがとれなくなってしまったのです。
この番組を見て、チンパンジーたちが見事なほど精神的に貧しくなるのを目の当たりにして、これはチンパンジーだけの問題ではなく、現代社会を生きる私たちに突きつけられた大きな課題でもあると私は強く実感しました。
私たちの生活は今後さらに便利になっていくことは容易に想像できます。時代は一人でも生活が完結する一見便利な時代に向かっているのかもしれません。しかし、一人でも生活が成り立つようになるということは、人とコミュニケーションをとらなくても生活できるということです。このことは、私たちが意識するしないにかかわらず、自分が今こうして社会生活できること、社会の中で生かされていることが、社会という大きな枠組みの中で間接的に多くの人々に支えられて生きているという謙虚な認識を次第に忘れてしまい、自分一人で生きているような傲慢な錯覚を起こしてしまうことになりかねません。
小学校3学年から高校に至るまで教科として子どもたちが学習する社会科は、発達段階に応じて社会のしくみを指導要領に記載された内容を教えるだけの教科ではありません。そのもう一つのねらいは、社会科の学習を通して、子どもたちに世の中のことに関心を持たせ、子どもたちの視野を広げることだと私は思います。社会というものが人と人とのつながり(絆)で成り立っているとするなら、それを分断して崩壊させてしまう元凶は、「無関心」だと私は思います。人々が世の中のことに無関心になることが最も恐ろしいことだと思います。ですから、社会科学習を通して子どもたちが社会のこと、世の中のことにいかに関心を持てるようにするかが、社会科学習の大きな使命の一つであると思います。
日本の社会では、政治に無関心な若者が多いと以前から言われています。私もそう思います。そして若者が政治に無関心なのは、学生時代に受けた社会科の授業の責任が大きいと私は思います。中学や高校では、政治の仕組みについて、世の中の諸問題について、詳しく教えはしていますが、授業の中で子どもたちが政治や世の中の諸問題について関心が持てるような指導がはたしてなされているでしょうか?
子どもたちを世の中のことへもっと関心を持たせるにはどうしたらよいか?
そのために子どもたちを社会科好きにするには?
子どもたちを指導する大人(教師)が世の中のこと、社会のことに今以上に関心を持たなくてはいけないのは当然のことと思います。
愛の反対は憎しみではない。無関心である。 マザー・テレサ
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