#32 ヘルプとサポート
お腹を空かせている人がいたら、あなたはどうしますか?魚を釣ってあげますか、魚のつり方を教えてあげますか。魚を釣って与えるのはとても親切です。相手を空腹から救うことができ、感謝されることは間違いありません。しかし、そうなると問題はずっと魚を釣って与え続けていかなくてはいけないことです。魚の釣り方を教えてあげるのはどうでしょう。ちょっと手間がかかります。相手が釣れるようになるのを待たなければなりません。ところが、いったん釣り方を覚えれば、もうあなたはその人へ魚を釣って与える必要はありません。
これはヘルプとサポートの違いを表した話です。魚を釣って与えるのはヘルプ、魚の釣り方を教えるのはサポートです。
ヘルプは相手を助けてあげることです。相手のためにいろいろやってあげます。ところがこの「相手のため」という言葉の中に落とし穴があって、結果として相手に力がつかないことで最終的には「相手のため」にはならないことです。ヘルプする時の基本的な動機は「相手ができないからやってあげる」というものです。
これに対して、サポートは相手が自分の力で物事を成し遂げるのを見守ることを意味します。余程のことでない限り手を出しません。しかしサポートする側には我慢が必要です。やってやった方がよほどうまくいくし、早くできると言うような時にも待つというのは手間がかかるものです。サポートする時の動機は「自分でできるから見守ろう」というものです。
ヘルプの多い親や教師に教えられた子どもは、自分で様々な体験をするチャンスを奪われるだけでなく、指示命令に従って行動することが多いため考える力が育ちません。「出来ない人」として育っていきます。
一方、サポートの中で育った子どもは、自分の力でいろいろなことを乗り越えてきていますから、「生きる力」を持っています。つまり、「出来る人」として育つわけです。
親や教師の役割は子どもをサポートし、子どもが自分の面倒が見られるよう、また自分の力で様々な問題を解決できるように自立させることです。問題処理能力の高い子どもは、様々な問題に巻き込まれることなく生きていく可能性が高いのです。
子どもを自立させる第一歩は、まず親や教師が自分のやっていることがヘルプなのかサポートなのか気づくことから始まると言えます。
このヘルプとサポートのちがいは教育の現場だけではないと思います。今日本の社会で問題になっている高齢化にも深く関わることだと思います。福祉や介護の世界でも、自分がしていることがヘルプなのかサポートなのかよく考えて行なう必要があると思います。人を自立させていくのがサポートです。もちろんヘルプが必要な場合は、真っ先にそうしなければいけません。しかし、ヘルプが、結果的に相手を甘えさせたり、依存させてしまう温床になってしまい、自立の芽を摘むことがないようにしていかなければならないわけですから、ヘルプとサポートをしっかり使い分けるのは教育の世界に限ったことではありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。