作業着メーカーさんを訪問しました。【丸五/前編(MARUGO)】
広島県東部にある府中市・福山市。「備後(びんご)」と呼ばれるこの地域は古くから繊維業が盛んで、国内作業服メーカーの7割が備後エリアに集まっています。
府中市で90年以上にわたって倉庫業を営む株式会社朝日倉庫は、地元の作業服メーカーさんたちの流通を長年サポートしてきた繋がりとノウハウから、作業服のオンラインショップ『WORKWEAR ONLINE』を運営しています。
そんな朝日倉庫が、全国的に人気を誇る地元のワークウェアメーカーさんのもとを探訪するこの企画。人気のヒミツ、製造のこだわりに迫ります!
『登場人物のご紹介』
【今回訪問したのはコチラ】
どのメーカーよりも働く人々の安全・安心にこだわり、品質と信頼性の高い地下足袋や安全スニーカーの開発に取り組んできた岡山県倉敷市発の地下足袋・作業靴メーカー。1919年創業、今年105周年を迎える老舗企業ながら機能性だけでなく高いデザイン性にも定評があり、カジュアルやスポーツ向けの足袋シューズや祭りに特化した足袋なども製造している。
【取材した人】
『丸五の魅力に迫る!』
西:今日は備後地域の隣町・岡山県倉敷市にある足袋・ワークシューズのメーカー、丸五さんにやって来ました!よろしくお願いします!
【足袋とゴム底の一貫生産を業界に先駆けて実現】
西:まずは丸五さんの歴史から教えていただけますか?
藤木会長:干拓地である倉敷市一帯では綿花が栽培され、そこから繊維産業が盛んになりました。現在でも倉敷市は帆布やデニムの生産地として知られています。当時は足袋が主な製品で創業家は家内工業で座敷足袋を製造していました。
当時はアメリカで開発された新しい素材であるゴム産業が日本国内においても発展し、人力車が街なかを走り始めていた時代。創業者の藤木伊太郎は「足袋にタイヤのゴムを縫い付けたら丈夫で作業しやすい履物ができるのではないか?」とひらめき、1917年に人力車のタイヤを加工して足袋に縫い付けた「縫い付け式地下足袋」を考案したんです。そして1919年、株式会社丸五の前身となる「丸五足袋株式会社」を設立しました。
松坂:それが、足底の裏にゴム底がついた地下足袋の始まりなんですね。
藤木会長:その頃、地下足袋は全国各地で同時発生的に作られ始めていたようです。ただ、布製の足袋とゴム底を一貫して生産したのは丸五が初めてだと聞いています。当時の新素材であるゴムを扱うのはかなり苦労したようですが、外国人の技術者を雇うなどしてノウハウを確立していきました。
西:縫製業を営んでいたところに、化学製品のゴムという全く異なる分野を取り入れたんですね。チャレンジ精神がすごいです。
藤木会長:需要が伸びることを確信していたのだと思いますよ。事実、足に力を入れやすい地下足袋は農業や工業、鳶職の方々に愛用されるようになり、近代日本の工業化に貢献したと思います。
丸五では1980年後半に、先芯入りの地下足袋を開発しました。足元の安全を守る先芯が入っていながら履き心地がよいと評判を呼び、現在でも多くの方にご愛好いただいているロングセラー商品となっています。
松坂:丸五さんといえば安全靴もバリエーション豊富に展開されていますが、安全靴を作り始めたのはいつ頃からですか?
藤木会長:安全靴の製造を始めたのは1990年代ですね。話が前後しますが、戦後は地下足袋よりもスクールシューズやミセス・キッズ向けのカジュアルシューズの製造が当社の主力となっていたんです。
カジュアルシューズ製造で蓄積したノウハウを活かし、「硬くて重くて足が痛い」「デザイン性に乏しい」という従来の安全靴に対するイメージを覆した安全スニーカー〈マジカルセーフティー〉を開発しました。動きやすくて疲れにくく、デザインもスタイリッシュ。画期的な商品として大ヒットしたんです。
【100年以上培った土台に、現場の声をのせて商品開発】
西:丸五さんが製品を作る際に大切にしていることは何ですか?
藤木会長:「履き心地が良く、足の健康を守ること」が一番大切なことと思っています。現在は海外での生産が大半となっていますが、足型や治工具の設計は自社でおこなっていますし、海外の委託工場の品質管理にも力を入れています。
松坂:105年の間に培った技術やノウハウを駆使して、履く人の安全や健康に配慮した靴づくりを続けておられるんですね。
福田社長:そうですね。そして時代に合わせた製品を生み出すため、「現場のリアルな声」を収集することに力を入れています。安全靴は今や建設業だけでなく、倉庫業や引っ越し業など幅広い業種の方々に履かれるもの。業種が違えばニーズももちろん違いますし、労働環境もどんどん変化しています。
そこで丸五の営業やデザイナーはさまざまな分野の作業現場に足を運び、「どんなことに困っているのか?」「従来の地下足袋・安全靴にどんな不便を感じているか?」などを現場で働く方々にとことん質問しています。また、どのような環境で働かれているのかもしっかり観察します。
西:作業現場を徹底的にリサーチするんですね。
福田社長:例えばスーパーマーケットのバックヤードは、昔は床が水で濡れていたので滑りにくい履物が求められていました。しかし近年の大規模食品加工工場では、滑りにくい床材が採用されていることから、必ずしも滑り止め付きの靴が求められるわけではありません。現場の「今」を把握することで、固定概念にとらわれず、働く方々のニーズをいち早くキャッチした商品づくりに取り組んでいます。
【女性ワーカーの声から生まれた、女性用安全靴】
福田社長:近年では、倉庫などでピックアップ作業に従事しておられるのは女性の方がほとんどです。にも関わらず、女性が履きやすい安全靴はまだまだ少ないという課題がありました。
そこで丸五は業界に先駆けて、女性用の安全靴の開発を始めました。そして生まれたのが、女性ワーカーの声を反映した〈マンダムFLY-UP#510〉という商品です。西さん、よかったら履いてみてください。
西:はい!…わ、すごく軽いです!
坂手さん:樹脂製の先芯や軽量ソールを使用し、安全性・耐久性を維持しながら水に浮かぶほどの軽さを実現しました。筋力の少ない女性でも疲れにくい履き心地となっています。また履き口には目地の細かい生地を使い、踵が自然に滑り込んで着脱しやすい仕様にしています。
西:たしかにスルッと履けちゃいました!急いでいるときには助かりますね。
福田社長:「子どもを抱っこしたままでも履ける」との声もいただいているんですよ。そして最大の特徴は、この『フィットベルト』です。
西:フィットベルト?
福田社長:靴紐と連動したベルトを内蔵していて、靴紐を締めるとインソールの土踏まず部分がきゅっと引き上がる仕組みです。インソールの高さを変えて土踏まずを刺激することで血行やリンパ管の流れを促進し、長時間の立ち仕事による足のむくみや冷え、ダルさにアプローチするというわけです。
松坂:足をマッサージするような機能ということでしょうか。今までにない仕組みですね。
西:足のむくみや冷えに悩む女性は多いと思うので、これは重宝しそうです!
福田社長:女性デザイナーが現場に赴き、女性ワーカーの悩みや要望を聞いて作った商品なんですよ。
藤木会長:そのほかにも新築住宅の内装業者や引っ越し業者向けの室内シューズ〈まもるん〉や、イノシシの足を参考に滑りにくいソールを独自開発した山林仕事専用のスパイク長靴〈プロレインスパイクM-31〉、業界で初めてエアークッションを採用した祭り用地下足袋〈エアージョグシリーズ〉など、それぞれの業種や用途に特化した商品を生み出しています。
松坂:当社でもそれらの商品を取り扱わせていただいていますが、それぞれ専門業者さんたちに支持されていることを感じます。
西:イノシシの足…?
藤木会長:イノシシの足は、雨の山中でも滑らないと聞きまして。猟師さんから実際にイノシシの足を送ってもらって、足の構造を研究して独自のスパイクソールを生み出したんです(笑)。
西:実物を送ってもらって研究!? すごい探究心…!
【現代的なデザインに落とし込んだ足袋シューズを展開】
松坂:丸五さんといえば、ファッション性の高い「足袋シューズ」も人気ですよね。私もレザー製の足袋シューズを、ビジネスシーンでも履かせていただいています。
藤木会長:ありがとうございます。10年ほど前からウェルネス部門として、カジュアルやスポーツ、リハビリテーション、ビジネスなどのシーンで履いていただける足袋シューズを企画・製造しています。
坂手さん:地下足袋ならではの履き心地の良さや歩きやすさはそのままに、現代的なデザインに落とし込んでいるのが特徴ですね。地元素材の倉敷帆布を使ったスリッポンタイプの足袋シューズブランド〈たびりら〉をはじめ、さまざまな独自ブランドを展開しています。
福田社長:ウェルネス部門でもチャレンジを続けており、昨年はヒール付きの足袋ブーツ〈Re:MOGA〉を発売しました。ヒールの高さは4.5cmで、これは「足にやさしい」という地下足袋の魅力と、ヒールブーツとしてのデザイン性を両立する上でベストな高さ。職人たちが試行錯誤して算出し、企画から発売までに約3年かかった渾身の商品です。
西:すごく可愛い! 成人式のときに発売されていたら袴と合わせて履きたかったな~!
藤木会長:本日はぜひ、足袋の製造工場も見て行ってください。
西:ありがとうございます!工場見学、楽しみです!
(記事後半に続く)
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