作業着メーカーさんを訪問しました。【コーコス信岡編】
広島県東部にある府中市・福山市。「備後（びんご）」と呼ばれるこの地域は古くから繊維業が盛んで、国内作業服メーカーの７割が備後エリアに集まっています。
府中市で９０年以上にわたって倉庫業を営む株式会社朝日倉庫は、地元の作業服メーカーさんたちの流通を長年サポートしてきたつながりとノウハウから、作業服のオンラインショップ『WORKWEAR ONLINE』を運営しています。
そんな朝日倉庫が、全国的に人気を誇る地元のワークウェアメーカーさんのもとを探訪するこの企画。人気のヒミツ、製造のこだわりに迫ります！
『登場人物のご紹介』
【今回訪問したのはコチラ】
明治34年、備後絣の問屋「信岡商店」として創業。昭和35年には「信岡センイ」と名を変え縫製業へ転身し、平成に入ると中国に自社工場を構えるなど海外進出を果たすと同時に、現社名「コーコス信岡」に。自社ブランド製品のほか、〈Dickies〉のワークアイテムも企画・製造している。
【お話を聞かせてくれた方】
株式会社コーコス信岡
原田さん
【取材する人】
ワークウェアについて知識を深めるべく勉強中。
メーカーさんの“想い”もショップを通して伝えたい！
『コーコス信岡の魅力に迫る』
【業界のタブーにも挑戦してきた老舗の作業服メーカー】
西：本日はよろしくお願いします。コーコス信岡さんは創業120年を超える老舗企業ということで、まずは会社の歴史から聞かせていただければと思います！
原田さん：よろしくお願いします。当社は福山市の特産である「備後絣」の問屋から始まり、63年前に縫製業へと転身した会社です。縫製業者としては後発だったため、「まだどこも手掛けていない取り組みを」との意気込みで、業界のタブーとされる商品づくりに挑戦してきました。
松坂：業界のタブーとは、例えば…？
原田さん：在庫となるリスクが高い、季節商品の開発などですね。当時は作業服といえば通年モノがほとんど。そんな中で当社は、特に夏物商品の展開に力を入れていきました。
また「作業服といえばグレー系」という概念が当たり前だった時代に、パステルカラーの作業服を先駆けて発売したのも当社です。高度経済成長期を迎えていた当時、企業のイメージづくりに一役買う存在として、ピンクやブルーといったカラフルな作業服が受け入れられたんです。
西：季節ごとの商品もパステルカラーの作業服も今では当たり前の存在ですが、世間にいち早く提案したのがコーコス信岡さんだったんですね。
【ケタ違いの消臭効果が半永久的に続く〈ニオイクリア®〉】
原田さん：作業服メーカーとしてのチャレンジ精神は今も受け継がれていて、近年の挑戦の一つが「消臭効果」に着目した商品開発です。
汗の気化熱を利用するファン付きウェアが台頭してから、汗臭問題に悩むワーカーさんが増えているんですね。そこで私たちが開発したのが、「実感消臭」を掲げた〈ニオイクリア®〉シリーズです。作業用インナーや靴下を皮切りに、アームカバーやタオルなど多彩に展開しています。
松坂：〈ニオイクリア®〉の靴下は、私の夫も愛用しています！
原田さん：ありがとうございます。〈ニオイクリア®〉のTwitterアカウントにも、主婦の皆さまから喜びの声をいただくんですよ。
「部活帰りのお子さんの靴下の臭いが洗濯カゴの中でさらに増幅されていたのが、〈ニオイクリア®〉の靴下に買い替えてからイヤな臭いがすっかり消えた！」など、お洗濯時の臭い問題も軽減されているようで。
西：汗や足の臭いがそんなにスパッと消えるなんて、一体どういう仕組みなんですか？
原田さん：秘密は“糸”にあるんです。ご説明の前に、ちょっと実験してみましょう。アンモニアの液体を、まずはピンク芯の糸に吹き付けてみます。直接鼻を近づけるのは危険なので、手であおぎながら嗅いでみてください。
西：（ｸﾝｸﾝ）…う゛ッ！アンモニア独特のイヤな臭い！
原田さん：かなりキツイ臭いですよね、すみません（笑）。それでは、次は青芯の糸に、先ほどと同じ量のアンモニア液を吹き付けます。こちらも嗅いでみてください。
西：は、はい（ｸﾝｸﾝ）。……あれっ！？全然臭わない！ここまで鼻を近づけても全然平気です！見た目は同じ白い糸なのに、どうして？？
原田さん：臭いが消えたほうは、糸の１本1本に消臭物質を化学結合した「消臭糸」なんです。
汗の3大要因であるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸を分解消臭する成分を糸に強く結合させた糸は、一般的な消臭試験の基準を遥かに超えたコーコス独自の試験で、原因臭の90％以上減少を達成しました。この消臭糸を使った商品が〈ニオイクリア®〉シリーズなんです。
原田さん：生地表面に消臭剤をコーティングした商品は洗濯を繰り返すうちに効果が薄れてしまいますが、〈ニオイクリア®〉は半永久的に消臭効果が続きます。靴下、インナー、今治タオルが特に売れていますね。ミドルソックスやカバーソックスなど女性向け商品も充実していますよ。
松坂：消臭効果をここまで突き詰めているのはすごいですよね。
原田さん：ワークウェア業界では「目に見えにくい効果は売れない」と言われています。そのため、「やるならとことん！」が当社のモットー。〈ニオイクリア®〉も小手先ではない、本当に消臭効果が実感できるものを追求しました。
その甲斐あって、〈ニオイクリア®〉シリーズは発売からわずか4年で累計販売数120万点を突破しました。「一度使ったら手放せない！」とリピートしてくださるお客様も非常に多いです。
【スーツと同じパターンで作る〈フォーマルワークス〉】
西：商品づくりのヒントはどこから得ているのですか？
原田さん：やはり、働く人々の声ですね。〈ニオイクリア®〉もそうですし、こちらの〈GLADIATOR®〉 カーゴパンツも「作業服っぽくないカジュアルなパンツが欲しい」というご要望を多数受けて生まれたものです。
西：えっ、これもワークウェアなんですか!?
原田さん：はい。ちなみに私が今着ているジャケットも当社の〈フォーマルワークス〉シリーズの商品です。
松坂：近年は、作業服の機能性を取り入れたフォーマルアイテムの需要が高まっていますよね。
原田さん：そうですね。〈フォーマルワークス〉のジャケットとスラックスは、スーツと同じ型紙を採用しているんですよ。ワークウェアでありながら、きちんと感を演出するシルエットとなっています。
スーツと同じ型紙とはいえ、〈アメイジング４wayストレッチ〉というタテ・ヨコ伸縮率20％以上の独自素材を使用しているので、動きやすさは抜群です！よかったら試着してみてください。
西：どの方向にもゴムみたいに伸びる～！しかも軽い着心地！
原田さん：長時間着ていても疲れにくく、シワになりにくいので出張時にも便利なんです。また、臭いが気になる背裏や袖周りには〈ニオイクリア®〉のメッシュ生地を使っています。洗濯機で丸洗いできて、2時間ほどで乾くのも特徴ですね。
松坂：汗をかきやすいこの季節、消臭効果がある上に自宅で丸洗いできるのは良いですよね。
【世界中で愛される〈Dickies〉のワークアイテムを企画・製造】
西：コーコス信岡さんといえば、〈Dickies〉の商品も手掛けていらっしゃいますよね。
原田さん：2009年にアメリカ発の人気ワークカジュアルブランド〈Dickies〉とライセンス契約を結んで以来、〈Dickies〉のワーク関連商品をコーコス信岡で企画・製造しています。2021年には〈Dickies〉の代表的アイテム・オーバーオールの製品ライセンスも取得しました。
西：〈Dickies〉のワーク関連商品の特徴はどんなところですか？
原田さん：〈Dickies〉らしいアメリカンレトロな雰囲気はそのままに、実用的な機能を盛り込んでいる点ですね。
例えばスマホがぴったり収まるポケットを設けたり、ストレッチ素材を使用したり、反射材を取り付けたり。働く人に寄り添った工夫を施すことができるのは、作業服メーカーならではの強みだと思います。
西：アメカジといえば！な〈Dickies〉を着て働くのは気分が上がりそうです！
原田さん：そうですよね。実際に「若い従業員を募集するためにカッコイイ作業服を導入したい」との想いから、〈Dickies〉の製品をユニフォームに採用する企業さんも増えていますよ。
【お客様の「あったらいいな」を高水準でカタチにする】
西：ほかにも、ユーザーの声から生まれた商品や機能があれば教えてください。
原田さん：ファン付きウェア〈VOLT COOL®〉シリーズには、腕の上げ下げによる裾のずり上がりを防止する「裾ずり上がり防止ループ」や、ファンの風による服の膨らみをダウンベストのように見せる独自縫製「風ダウン仕様」などを取り入れています。
「作業するたびに裾がずり上がってくるのがストレス」、「ファン付きウェアをカッコよく着こなしたい」というお客様の声を反映した機能ですね。こちらもご試着どうぞ。
西：たしかにファンを稼働させても、ダウンっぽいビジュアルで野暮ったく見えないですね！風力もかなり強い！
原田さん：そのほか昨年発売した〈5ポケットTシャツ〉は、5つのポケットにスマホや500mlペットボトル、作業道具、暑さ対策グッズなどが余裕で収納できることから「夏場でもカバンいらずのTシャツ」として大人気商品になりました。
また今の時代、「SDGs対策を通して企業のイメージアップを図りたい」というニーズが年々高まっています。そうした背景を踏まえて今季発売したのが、エコな作業服〈BOTTLE TECH®〉シリーズ。業界初（※）のペットボトル再生繊維を100%使用した製品です。
※2022年8月時点コーコス信岡調べ／布帛作業服
松坂：再生繊維100％！ここにも御社の「やるならとことん！」の精神が伺えますね。
西：お客様の細かい要望もすくい上げて、商品づくりに活かしているんですね。
原田さん：そうですね。「あったらいいな」という声を商品に落とし込むことは容易ではありませんが、120年以上培ってきたノウハウとチャレンジ精神によって、「糸から工夫した半永久的な消臭効果」など、高い水準で実現できるのがコーコス信岡の強みです。
朝日倉庫さんのショールームで開催される地元作業服メーカーの合同展示会でも、普段なかなか交流することがないエンドユーザー様と関わりを持つことができて、そこで得た知見も新しい商品開発に活かしているんですよ。
西・松坂：私たちも商品づくりのお役に立てていると思うと嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします！
原田さん：こちらこそ、よろしくお願いいたします。
『取材を終えて…』
120年以上も続く老舗企業でありながら、攻めの姿勢を貫いているコーコス信岡さん。ショールームには、衣料品から雑貨まで「はたらく」に関する自社商品がズラリと並んでいて圧巻でした！
コーコス信岡さんの商品は『WORKWEAR ONLINE』でもお取り扱いしています！
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