韓国大統領選の呪術騒動〜プロテスタントとシャマニズム
2021年1月の米国・バイデン新大統領の誕生に、10月の日本・岸田新首相の誕生、12月の独・シュルツ新首相の誕生、そして2022年1月イタリア大統領選挙、2022年4月フランス大統領選挙と、先進国首脳の交代が2021年〜22年と集中している。そんな中、隣国の韓国でも任期満了に伴う大統領選挙が3月9日に予定されており、候補者同士の論戦が活発化してきている。いまのところ、与党「共に民主党」の公認候補の前京畿道知事 李在明氏と、野党「国民の力」公認候補 前検事総長 尹錫悦氏の一騎打ちとされているが、第三の候補者による番狂わせも囁かれており、残り50日を過ぎて、選挙は更に熱を帯びている。
さて、韓国はアジア有数のキリスト教国であり、政教分離を謳ってはいるものの、現状、キリスト教会の支援なくして選挙で勝つことができないということは、以前も本コラムで取り上げた。こうした背景があってなのか、先に紹介した2名もプロテスタント系クリスチャンであること公表し、選挙戦に臨んでいる。
こうした折、大統領候補の尹氏のある行為が波紋を呼んでいる。
元々、山岳信仰の強かった韓国は、キリスト教化が進んだ今もなお、風水や占い、まじない等の巫俗(シャマニズム)に強く影響をうける。尹氏本人は否定しているものの「手のひらの『王』の字」も、そういった類いのものではないかと言われている。
しかし、「聖書こそが唯一頼れる術」だと考えるプロテスタント信仰にとって、超自然的存在を重んじるような呪術信仰は、全く相容れない考え方である。結果、尹氏は騒ぎを沈静化し、プロテスタント有権者の支持を訴えるため、大教会の礼拝に参加したことを積極的にアピールしているが、支持の回復には時間が掛かりそうだ。
このように厳しい選挙戦を強いられている尹氏だが、一方で、対抗する李氏においても様々な醜聞や不祥事が連日のように報道されており、韓国大統領選はさながらスキャンダル合戦となっている。こうなると、信仰云々以前の問題なのでは?と考えてしまう…。
一向に収束が見えないコロナ感染症対策に、相変わらず強気な態度を示す北朝鮮との関係、冷え込んだ日韓関係など、次期政権が担う課題は多い。こうした課題に対して、今後どのように取り組んでいくのか。
それを占うのはシャーマンや呪術師ではなく、正しい政策論戦に他ならない。
(text しづかまさのり)
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