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ローマ教皇だって…悩む!

 先頃発表された第92回アカデミー賞では、前ローマ教皇ベネディクト16世(以下、ベネディクト16世)と現ローマ教皇フランシスコ(以下、フランシスコ)との代替わりを映画化した「2人のローマ教皇」が、主演男優賞と助演男優賞の2部門にノミネートされた。この歴史的な交代劇が映画化されるのは初めてではなく、3年ほど前にもフランシスコが教皇になるまでの半生を描いた「ローマ法王になる日まで」が公開されている。内容が重なる伝記映画を就任10年も経たない間に2本も制作しているのだから、日本に初来日した際のフィーバーといい、フランシスコというのはメディアとの付き合い方がとてもお上手なようだ。

 それはそうと、この「2人のローマ教皇」は、とてもオススメできる作品である。ベネディクト16世とフランシスコの2人の対話を中心に「信仰の在り方」と「罪の赦し」といった重厚なテーマを扱ってはいるが、宗教映画にありがちな「重さ」や「暗さ」、あるいは「小難しさ」といった点はほとんど見られず、むしろユーモアを交えながら軽妙なテンポで物語は進んでいく。特に、主演のジョナサン・プライス(フランシスコ役)とアンソニー・ホプキンス(ベネディクト16世役)の演技は秀逸である。物語はあくまで史実に則ったフィクションとして描かれているのだが、そのコミカルでありつつも、円熟味あふれるパフォーマンスには強い説得力があり、実際に本人達が出演しているのかと思うくらい、役にどハマりしている。

 物語は史上初めて南米出身の教皇として就任前からカリスマ的人気を持つフランシスコと比較して、ベネディクト16世は凡庸な教皇として映し出される(まぁ、これは物語の中だけではなく、実際、カトリック教会のスキャンダルに際し、組織を制御しきれずに失意のうちに退位した教皇というのが一般の評価だろう…)。しかしその分、ベネディクト16世の本当に真面目な(保守的な、とも言えるが)カトリック教徒としての側面を物語では印象付けている。そして葛藤し、悩む。「(御心のままにつとめてきたのに)神の声が聞こえなくなった」と、ベネディクト16世がフランシスコに告解する場面は、「真面目なだけではやっていけないんだよ…」と、この不都合な社会に生きる我々に投げかけているようで、なんだかとても胸が締め付けられる。この世界一ストレスを抱えたお年寄りに、どうか退任後の健やかな信仰生活を与えて欲しいなと、鑑賞後、強く慮った。

 映画は、UPLINK渋谷で劇場公開中の他、Netflixでも公開をしている。キリスト教に詳しくない人でも、楽しめる内容なので是非オススメしたい。尚、アカデミー賞は、2020年2月9日(現地時間)に発表される。

※関連LINK
UPLINK渋谷 https://shibuya.uplink.co.jp
Netflix https://www.netflix.com/jp/title/80174451
映画「ローマ法王になるまで」を語ってみた
https://www.youtube.com/watch?v=Q6Pml6PO_sI&feature=youtu.be

(text しづかまさのり)

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