仮面の秘密〜「アノニマス」の仮面に関わるキリスト教会
2023年のお正月早々、渋谷区の公式サイトが国際的ハッカー集団「アノニマス」にサイバー攻撃を受け、サイトに接続できない状態が続いた。「渋谷区によるホームレスシェルターを閉鎖に抗議した攻撃である」というアノニマスからの声明も含めて大きな話題となった。
ところで、「アノニマス」と言えば、ちょび髭が印象的な仮面をイメージする人も多いのではないだろうか。正式名称を「ガイ・フォークス・マスク」と呼ばれるこの仮面、17世紀初頭の英国において発生した、イングランド国教会および政府転覆のテロ事件(火薬陰謀事件)に加担した「ガイ・フォークス」というカトリック教徒がモチーフとなっている。
イングランド国教会の誕生による半世紀以上にわたるカトリック教徒への迫害が原因となった本事件、結局は未遂に終わり、ガイ・フォークスを含むテロに関わった13名のカトリック教徒は全員捉えられ、無残な形で処刑をされる。しかも、皮肉なことに、以降、事件が起きた11月5日は王が助かったことを感謝する日に指定され、かがり火を焚いたり、花火を打ち上げたり、何故か、加担者の1人に過ぎないガイ・フォークス(首謀者は別の人間)を模したマスクとともに、この祝祭日は現在でも続いている。
アノニマスがガイ・フォークス・マスクをシンボルとしているのは、ガイ・フォークスという人物が専制政治への抗議運動の象徴的存在だからとも、なんとなく面白半分で多くの参加者が付けていたからとも言われており、その背景はよく分かっていない。ただ、今や「情報」という部分において国や政治すらも脅かす存在となったアノニマスによって、脅かすことすらできなかったガイ・フォークスという人物が400年という時を経て注目されるのはなんとも不思議な話である。
(text しづかまさのり)
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