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【毎日漢字1文字ブログ (2)】 岐


JIS第1水準の漢字2965文字から、ランダムに1文字を選択するジェネレーターを作りました

本編

「生まれ変わるなら何になりたい・・・?」
「過去に戻れるとしたらどこに戻りたい・・・?」

皆さんはどう回答するだろうか。

僕は、いつもこの質問への回答に頭を悩ませてしまう。

河野玄斗のような、生まれてすぐに九九を覚えた天才だったらどうだろうとか、
リチャード・エティーニのような、ケニアが生んだ箱根駅伝華の2区10人抜きの俊足の持ち主だったらどうだろうとか、
はたまた浜辺美波のような世代で一番人気の美人女優だったらどうだろうとか
なんなら他人より思ってしまうかもしれない。

生まれ変われるとしても僕のままがいいし、
過去に戻れるとしても戻るのが面倒臭い、というのが正直なところである。


僕は過去、ある女性とお付き合いをしたことがある。
気品があり、優しく、そして天真爛漫で美しい女性だった。

出会いはサークルで、僕の一目惚れからだった。
地道にラインでやり取りをして、デートをして、そこから念願かなってお付き合いをさせていただくことになった。

当時彼女は劇団員のアルバイトをしていた。
職業柄、あまりお付き合いをしていることは口外しないでほしいと言われ、
隠密に付き合っていたが、いつバレるかわからないハラハラ感とか、
2人だけの秘密をシェアしている感じがまたたまらなく楽しかった。

しかしある日、彼女がいきなり泣きながら電話をかけてきた。
「付き合っていることが劇団にバレてしまった。」と

あまりに慌てていた様子だったので、僕も引き留めることができず、
僕らの物語はあっさりと打ち切られてしまった。
最終回はあまりにも呆気なく、あっさりとしてしまっていた。

あっさりとしすぎて、僕は呆然としてしまった。
僕の頭の中の辞書はきっと、
「あの時引き止められたら」「まだ可能性はないのかな」という言葉だけだったのかもしれない。

それから、その「元」彼女はいつの間にかものすごくビッグな人になっていた。

いよいよ特定が怖いので細かいところは伏せるが、色々なメディアに出るほどにすごい人になっていた。

それでも、僕と肩を並べて歩いていたあの頃が忘れられなくて、「まだ可能性がある」と本気で思い込んでいたから、僕も必死で肩を並べられるくらいまでしがみつこうとした。

それが、僕の中での最大の分岐点なのかもしれない。

打ち切られたドラマやアニメは、余程の事がない限り続編なんてありえないだろう。
かの有名なイナズマイレブンなんて、円堂守が築き上げてきた人気があったから、あそこまで長く続いたのだ。決して稲森明日人のおかげでは無い。

それでも僕は、ただ「肩を並べた気になっていたけど、どこか遠くに行ってしまうという現実と向き合いたくない」「自分だけ未熟なのは嫌だ」というだけで、その執念だけで、ありもしない続編を探し続けた。

当然のごとく、その後は追いつける訳もなかったから、
今こうして「一般社会人男性」を名乗っているのだが、
あの時の分岐点と、そこから先の自分の環境や執念は今も自分の原動力になっている。

逆にあの時の分岐点で、僕が当時の彼女に対して強く劇団を辞めさせたら、きっと今以上に僕もその当時の彼女も平凡なままだっただろうし、
その時の執念は得ないまま、外の世界を知らないままの無趣味陰キャライフだったのだろう。
それはそれで今考えただけで恐ろしい。

僕は、人生何度も後悔したし、その場では分岐点をミスってしまったと思う時は何度もあったが
今の自分の良いところも悪いところも全て含めて、
間違えた岐路も含めた過去の行動から全て生まれている。

その意味では、きっと人生の分岐点はそこであったが、
今更そこに戻りたいかとも思わないし、今の自分にも割かし満足している。

そんなことを思い出しながら、年始2日目、箱根駅伝をじっくりと見るのであった。

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