「青い目」で見据える、地域とワーケーションの関わり
二度目まして。
千曲市に移住して時給10円生活をしております、シンガーソングライターの884です。
前回紹介した「姨捨ゲストハウスなからや」に続き、亀清旅館のご主人タイラー・リンチさんにお話を伺いました。
戸倉上山田温泉の顔とも言えるタイラーさんが、長野県千曲市で温泉宿を継ぐことになった背景や、千曲市ワーケーションに関わる様子を紹介します。
シアトルから長野県千曲市に移住、温泉宿の後継ぎに
「後継者がいないので、旅館を壊して駐車場にしようと思う。」
約15年前、シアトルで暮らしていたタイラーさん一家のもとに届いたのは、奥さんのご実家である亀清旅館廃業危機の一報。
過去に亀清旅館に訪れたタイラーさん、当時体験した"体の芯からあたたまる良質な温泉や風情のある旅館"に感動したといいます。
そんな思い出深い旅館の廃業を耳にしたとき「伝統的な温泉を駐車場にするなんてもったいない」と、 タイラーさんはシアトルから跡取りとして千曲市へ移住することを決めました。
右も左もわからないまま飛び込んだ旅館業でしたが、積極的にお客さんとコミュニケーションをとり、県内外・国内外から多くの観光客を迎え入れました。
当時貿易会社で働いていたタイラーさんは日本を度々訪れる親日家です。
日本文化を尊重しながら細かな気遣いやサービスを提供し、
自ら「青い目のおもてなし」と称して「覚悟」をもって日々を過ごしました。
行動力はまさにマグロ
具体的な千曲での活動について尋ねると「数えたらキリがない」と困ったように笑いながら、作りかけの露天風呂を案内してくれました。
大浴場に作られた露天風呂に加え、客室で楽しめる庭とつながった露天風呂を制作中のようです。
密を回避しながら温泉を楽しんでもらえるようにと、長引くであろう新型コロナウイルスの情勢を鑑みて設備を整えています。
こうして露天風呂作りから布団敷きまで、日頃の旅館業に加え、英語版の戸倉上山田観光マップ作成や、温泉街の旅館や飲食店の食べ物をデリバリーできる「温泉イーツ」などの温泉街推進活動、レンタサイクル事業(ズグダシ)や観光ガイドツアーまで、千曲市のために空き時間や休日返上で、止まることなく動き回っています。
日々のこうした活動には、ワーケーションから得た知見も多分に含まれているそうです。
ワーケーションの交流から得たもの
「普段交流出来ないような専門家と交流できて、外からの知恵を沢山いただいてるのはワーケーションのおかげ」と千曲市ワーケーションの魅力を語るタイラーさん。
参加者の方々が亀清旅館を利用してくれることで生まれた交流から、リモートワーク需要に対応した大画面液晶とキーボードを客室で使える新しい宿泊プランを打ち出しました。
全国市町村の建設部に向けた講演会に登壇する機会があるタイラーさん。
「全国にワーケーションで生まれた温泉MaaS※を紹介していきますよ。」
※温泉MaaS……温泉地を含む観光地にて、ワーケーションとモビリティサービスを組み合わせ、シェアカー、シェアサイクル、タクシー配車などさまざまな交通手段を利用できる配車システム。千曲市ワーケーション参加者によって発案され、開発がされた。
旅館運営に影響を与えたワーケーションでの取り組み
千曲市ワーケーションにおいて、株式会社ふろしきやがしなの鉄道と協働で観光列車ろくもんを貸し切った「トレインワーケーション」を開催しました。
多くの参加者が驚き、非日常の体験を味わった「トレインワーケーション」は、タイラーさんにとっても衝撃の取組みにったようで「普段なら有り得ない、ろくもんを貸し切ってのトレインワーケーションなんていう"事例"を作っちゃったじゃないですか!?それは本当にとんでもない変化で。我々旅館側も、そんな事例がなければできなかったようなプランを作ったり、提案しなきゃいけない。」と刺激になったと語ります。
「田村さん本当によくやるよ……」
千曲市ワーケーション運営者に対しての敬意を含んだ激励には、カタチは違えど同じように動いてきた者にだけ分かる重みがあります。
海外の人にもワーケーションを体感してほしい
千曲市ワーケーションの受け入れ側としてサイクリングツアーや姨捨棚田のガイドツアー、ワークスペースの提供など惜しみない協力をしてくれているタイラーさん。
千曲市ワーケーションの展望について伺ってみると、「他県のワーケーションにも参加してみて、体験をすることで色んな発想が出てくると思う。」とのこと。
視野を広げ、千曲市ワーケーションをアップデートするタイラーさんが目指すのは、ワーケーションのグローバル化。既に日本在住の海外の方に声をかけているようですが、なかなか参加を促すのは難しいそうです。しかし「千曲市ワーケーション参加者や地域住民のプロフェッショナルが出来ることを積み重ね、結果を出していくことが大切」とタイラーさんは意気込みを語ります。
青い目で見据える地域とワーケーションに新しい可能性を感じさせながら、タイラーさんは今日も布団敷きをしに客室へと向かっていきました。
元々あるつながりから吸収したものを自身の活動に還元しつつ、変化や理想をしっかり見据えるタイラーさんの姿勢、彼が語る一言ひとことには故郷を離れ挑戦をし続ける覚悟や信念を感じます。
私884も、タイラーさんが仕掛ける活動の力になり、一緒に千曲の町を盛り上げたいと改めて感じました。
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