消費
白衣の袖に腕を通しながらいつも思う。
自分は何者なのだろう、と。
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日曜の夜勤明けが一番嫌いだ。
世界はこれから素敵な休日が始まるというのに、私はボロボロになった体をなんとかシャワーで洗い流しベットに潜り込む。
目をつむる。
日曜日のぬくもりにさよならを告げながら一瞬で意識が飛ぶ。
夜勤明けの睡眠は泥のように気持ちが悪い。
人間の生活リズムとは全く逆の行為なのだから当たり前だ。
ヤケ酒後の睡眠とも、オール明けの睡眠とも違う。
こんな睡眠に、安寧だとか安らぎなんてものはない。
3時間半の睡眠から目が覚めた。
時計をみると16時過ぎ。まあこんなもんだろう。
夜勤明けはこのくらいが限界だ。
体が重たい。
昨日の勤務はそれほど忙しくなかったが、やはり眠気を押し殺して集中力を途切れさせずにいることは、相当脳と体に鞭を打つ行為だ。
何か胃に入れたいが、気持ちが悪い。
水を飲もうとベットから抜け出す。
カーテンを開けると、日曜日の夕方の日差しが容赦なく差し込む。
秋の穏やかな日曜の日差しであるのに、この日差しが嫌いだ。
水を飲む。
水の冷たさで食道から胃にかけての形がくっきりと浮かび上がる。
眠気はないがすっきりしない。
またあと7時間後には寝ないといけない。明日も朝から仕事だ。
何のためにこの仕事をしているのだろう。
誰のためにこの仕事をしているのだろう。
国家試験に合格し、期待に胸を膨らませていたあの頃の私は、こんな風に日曜の日差しに嫌気がさす日々が来るなんて思ってもみなかっただろう。
患者の命を救うのは医者の仕事だ。
患者はいつも病院を去る時に「ありがとうございました」と医師に告げる。
結局看護師は、医師の手下なのだろうか。
毎日体をふいて、おむつを替えて、体の些細な変化に気づけるよう注意を払って、夜間の止まらないナースコールを片っ端から拾い上げて、本当に私は誰かの役に立つ看護師になったのだろうか。
自分で自分がわからない。
穏やかな日差しを気持ちいいと思う心を無くしてまで、ここにいる意味は何だろう。
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