【I#003】メジャー通貨ペア相場分析まとめ_2022年8月18日米国経済指標発表に関連して【2022年8月19日午後】
本日の午後の投稿は、昨日発表のあった米国の経済指標の結果が為替に与えた影響をまとめます。
■発表された経済指標
昨日は米国の5つの経済指標が発表されました。
その5つの指標は「米前週分新規失業保険申請件数」「米前週分失業保険継続受給者数」「米8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数」「米7月中古住宅販売件数〈前月比/年率換算件数〉」「米7月景気先行指標総合指数〈前月比〉」です。
■指標の概要
昨日発表された経済指標がどのようなものなのかを確認していきます。
▷米前週分新規失業保険申請件数
〝新規実業保険申請件数〟とは、米国で新たに申請された失業保険の件数を集計したものです。
〝米国労働省雇用統計局〟が毎週集計して発表しています。
木曜日に前週分の数値が発表され、その特徴としては〝雇用統計〟に2~3ヵ月先行する〝景気先行指数〟として重視されており、米国の雇用の状況を知る上で大切な指標です。
毎月12日が〝米雇用統計の基準日〟であり、この日を含む週の発表は他の週の集計期間よりも注目されています。
▷米前週分失業保険継続受給者数
〝失業保険継続受給者数〟とは、失業保険の新規申請後に失業保険の需給を継続している人数を集計したものです。
発表は〝米国労働省雇用訓練局〟が行っており、毎週木曜の〝新規失業保険申請件数〟と主に発表されます。
この指標の特徴は、国内の景気を2~3ヵ月先行する、と言われていることです。
▷米8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
米国の地区連邦銀行であるフィラデルフィア連銀が、管轄区域内の〝製造業〟の景況感や経済活動状況を指数化し発表している指標です。
この指標は、毎月第3木曜日に発表されます。
前月との比較と6ヵ月後の予想を「減少または悪化」「変わらず」「増加または好転」の3つの選択肢から選ぶ形の調査のようです。
マイナスの数値は〝不況〟を表し、プラスの数値は〝好況〟を表します。
フィラデルフィア連銀は「ニュージャージー州」「デラウェア州」「ペンシルべニア州の一部」の地域を管轄しています。
地理的に近くに位置しているニューヨーク連銀の、毎月15日発表される〝ニューヨーク連銀製造業景気指数〟と同様の指標です。
この2つの指標の特徴として、全米の景気を網羅的に表し、さらに注目度の高い〝ISM製造業景気指数〟の先行指標として重視されています。
▷米7月中古住宅販売件数〈前月比〉
〝中古住宅販売件数〟は、米国内で販売された中古住宅のなかで、所有権移転まで完了した販売件数のことをいいます。
集計された数値は季節調整がされ、同時に年率換算された件数も発表されます。
この集計の対象となる中古住宅は、集合住宅を含むようで、全米不動産業者協会(NAR)が毎月発表しています。
米国の景気を表す指標とひとつで、全米および北東部、中西部、南部、西部の中古住宅の販売価格・販売件数・在庫数、そこに共同住宅とコンドミニアムを含めた数値です。
〝新築住宅販売件数〟が契約書への署名ベースであるのに対し、〝中古住宅販売件数〟は所有権移転完了時の住宅が集計対象のため〝新築住宅販売件数〟に対してその影響は30~60日遅れて数値に反映される、と言われています。そのため〝新築住宅販売件数〟の方が景気を先行して表す、と認識されています。
▷米7月景気先行指標総合指数〈前月比〉
「景気先行指標総合指数」は「景気先行指数」「景気一致指数」「景気遅行指数」の3つで構成されています。
この3つの中でもっとも注目度の高い「景気先行指数」の定義を確認します。
「景気先行指数」は米国の民間の非営利調査機関である全米産業審議会(カンファレンスボード)が、景気動向に先だって変動すると思われる10項目の要因から算出した指数です。
全米産業審議会は、米国の経済団体や労働組合などで構成されています。
〝景気先行指標総合指数〟を構成する項目は、「S&P500」「実質マネーサプライ(M2)」「長短金利スプレッド」「消費者期待度指数」「消費財新規受注」「入荷遅延率」「非国防資本財受注」「新規住宅着工件数」「週平均失業保険申請件数」「週平均労働時間」の10個です。
各項目にはウェイトがかけられており、〝実質マネーサプライ〟と〝週平均労働時間〟の2つの指数に占める割合は50%を越えます。もっともウェイトが低いのが「非国防資本財受注」のようです。
◆経済指標が為替相場に与える影響
昨日の経済指標は米国のものが多かったので、上記の発表が米ドル、ひいては為替市場にどのような影響を与えたのか確認していきます。
▷米前週分新規失業保険申請件数
予想より低い結果になるとドル買い、高い結果になるとドル売りの傾向があります。
前週比での結果も重視されているようです。
▷米前週分失業保険継続受給者数
予想より高い結果が出た場合にはドル売り、低い結果が出た場合はドル買いの傾向がある、と考えられています。
〝40万件〟が米国内での雇用状態が良好かどうかの基準とされていて、予想に対しての結果と、この基準を上回るか、下回るかどうかも重視されています。
▷米8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
予想より高い結果となればドル買い、低い結果となればドル売りの材料として捉えられます。
▷米7月中古住宅販売件数〈前月比〉
住宅購入に伴う家具などの消費財の需要増大による経済への波及効果により、予想より高い結果でドル買い、低い結果でドル売りの傾向があるようです。
▷米7月景気先行指標総合指数〈前月比〉
上昇傾向だと「景気回復」が示唆され、米ドル買いや債券価格の下落の要因となり、下落傾向の場合は反対に「景気減退」が予想されるので、米ドル売りや債券価格の上昇の要因になる、と捉えられています。
◆20220818発表の米国指標発表の結果
【2130発表の経済指標】
▷米前週分新規失業保険申請件数
《予想との差》:+1.5万件 結果 :25.0万件 予想 :26.5万件 , 前回 :26.2万件
▷米前週分失業保険継続受給者数
《予想との差》:▲0.1万人 結果 :143.7万人 予想 :143.8万人 , 前回 :142.8万人
▷米8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
《予想との差》:+11.2 結果 :6.2 予想 :▲5.0 , 前回 :-12.3
【2300発表の経済指標】
▷米7月中古住宅販売件数〈前月比〉
《予想との差》:▲1.0% 結果 :▲5.9% 予想 :▲4.9% , 前回 :▲5.4.%
▷米7月中古住宅販売件数〈年率換算件数〉
《予想との差》:▲6万件 結果 :481万件 予想 :487万件 , 前回 :512万件
▷米7月景気先行指標総合指数〈前月比〉
《予想との差》:+0.1% 結果 :▲0.4% 予想 :▲0.5% , 前回 :▲0.8%
◇上記の結果より
2130時点では、ドル売りにつながる〝新規失業保険申請件数〟の結果の予想上振れ、ドル買いにつながる〝フィラデルフィア連銀製造業景気指数〟の予想上振れと、2つの相反する結果となっています。
また、2300時点ではドル売りにつながる〝米7月中古住宅販売件数〟のマイナスの数値、ドル買いにつながる〝米7月景気先行指標総合指数〟予想上振れの結果と、こちらもドル相場に対しては正反対の影響を示す結果となりました。
◆指標発表前後のメジャー通貨ペアの価格推移
実際の価格推移を確認してみます。
▶2130時点→2145時点の推移
▷USD/JPY : 134.729→135.090 (+32.1Pips)
▷EUR/JPY :137.161→137.321(+16.0Pips)
▷GBP/JPY : 162.461→161.723(+73.0Pips)
▶2300時点→2315時点の推移
▷USD/JPY : 134.977→135.205 (+22.8Pips)
▷EUR/JPY : 136.674→136.814 (+14.0Pips)
▷GBP/JPY : 162.107→162.229 (+12.2Pips)
特にドル円が両時間帯ともに上昇しています。
他の2つの通貨ペアに関しても、相場環境など他の要因があるかもしれないですが、おそらくドル高に影響される形で上昇しています。
◆考察
今回の指標発表の結果、為替はドル高になりました。
この事実から他に影響を与えている要因を排除した上で考えることのできる各指標の影響力の違いは、
「新規失業保険申請件数」<「フィラデルフィア連銀製造業景気指数」、
「米7月中古住宅販売件数」<「米7月景気先行指標総合指数」
となります。
為替の世界では一般的に、経済指標には為替相場への影響力がランク付けされていますが、経済指標の発表の結果は様々です。
今回のように〝正〟と〝負〟の影響が相殺しあう場合や、〝ドル高〟を示唆する結果が重なった時も、上昇は限定的で下落に転ずる場合もあります。
今回の投稿内容の作成に際して、影響力の高い指標であったとしても、
▷経済指標発表の結果と予想との差が0に近づけば為替相場に対する影響が発生しないもの
▷指標そのものが景気や経済の動向を示すものとして重視され、予想対比があまり関係ないもの
▷予想対比と指標自体の〝マイナス〟〝プラス〟の結果とその数値の大小の特定の条件の組み合わせが発生した時に、為替相場に大きな影響を与えるもの
上記のような特徴をもつ可能性があるのではないか、と考えました。
各国で平日、毎日のように発表される経済指標に上記のような性質があったとしても、経済指標の結果の影響は相場環境や投資家心理に打ち消されることもあるでしょうし、その逆に指標発表の印象が相場環境を支配することもあります。
指標発表の時期や各国の関係、また経済状態が影響を受ける気候や政治的なニュース、そして為替相場の長期的なトレンドや各国政界及び財界の要人発言など、為替相場に大小の影響を与える要因は数知れないですが、何百回も繰り返し検証を行うことで、複雑な背景・要因を整理し法則性を見つけることは不可能ではないはず…と考えています。
上記のような仮説を毎回組み立て、整理し、再度検証することはトレード成績においてもプラスになってくるのではないか、と考えているので、今後も〝ファンダメンタルズ分析〟は、なるべく重要度の高いものに焦点をあてて実施していきたいと考えています。