非接触三次元測定器とは?
はじめに
我が国の製造業は、海外の他の国々よりも「品質」を重要視する傾向があります。より品質の良い製品を作るために、部品や製品の寸法が正確であることが求められます。寸法が正確であるかどうかは、部品や製品を測定することによって確認できます。
三次元測定器は、立体物の寸法や角度・形状などを測定する装置で、現在では製品の品質保持のために欠かせないツールとなっています。
三次元測定器は「接触式」と「非接触式」に分類され、その中にもさらに様々な種類があります。
三次元測定器とは?
三次元測定器とは、立体物の座標値(X・Y・Z)を計測し、製品の寸法や形状を測定する装置のことです。
測定対象物の縦・横・高さの三次元座標を取得し、その寸法や角度、位置関係などを高精度に測定することができます。
三次元測定器には様々な種類があり、大きく「接触式三次元測定器」と「非接触式三次元測定器」に分類されます。
単純な形状には接触式でも充分ですが、複雑な形状や自由曲面の多い形状には非接触式の方が適しています。
接触式三次元測定器
接触式三次元測定器は、プローブ(接触子)を対象の立体物に接触させて三次元座標を測定し、3Dデータとして表示する方式です。
対象物が平面であれば、測定する接触点の数が少なくても必要な寸法を測定することができます。しかし、対象物の形状が複雑である場合や自由曲面が多い場合は、より多くの点を測定する必要があり、測定に時間がかかるというデメリットがあります。このため、形状によっては測定が不可能な場合があります。
また、測定の際に対象物に触れてしまうため、小さな傷をつける可能性があります。
さらに、経年劣化でタッチプローブが摩耗することにより、少しずつ測定値に誤差が生じてきてしまいます。
非接触式三次元測定器
非接触式三次元測定器は、レーザーや光を対象の立体物に照射して、三次元座標や寸法を測定する方式です。プローブが対象物に接触しないため、柔らかい素材にも有効です。また、曲面の多い対象物も容易に測定ができます。
非接触式三次元測定器は、全体形状をそのままデータ化すること(デジタルツイン)ができます。これにより、対象物の3D CAD設計データと比較することが可能になり、製品が設計通りに作れているかどうかを確認することができます。
非接触三次元測定器の需要拡大
近年、設計技術の高度化により、複雑な形状や自由曲面を持つ製品が増えたり、また測定対象が小さくなって、プローブが測定対象に入り込まないため、接触式では測定出来ない物も増えてきています。また、求められる精度が厳しくなってきているため、下記のような理由で接触式よりも非接触式による測定の需要が増えてきています。
① プローブの摩耗による精度の信頼性の低下が受け入れられない
② どんなに小さな傷でも受け入れられない
非接触三次元測定器は対象物には触れませんので、プローブが摩耗することによる数値の変化もありません。また、対象物に傷を付ける心配もありません。加えてプローブが入り込めない測定対象も測定する事が可能です。
さらに、レンズ精度やセンサー能力の向上、ソフトの利便性が上がってきていて、精度はナノメーターレベルになっており、形状も粗さも精確に測定することが出来ます。
これらの理由により、急速に需要が拡大してきています。
非接触三次元測定器の利点
1. 同じ場所を傷付けずに何度でも測定できる。
2. 接触式プローブでは測定不可能な微細形状や、わずかな測定力でも変形してしまう柔らかい物を測定可能。
3. プローブが摩耗することによる数値の変化がない。
4. 測定した後に加工を行うことが出来る。
5. そのまま製品として使用することが出来る。
6. 測定したデータは何度でも解析が可能。
7. 加工前後の差分解析が可能。
8. 接触式より測定スピードが速い。
9. 機種によっては、形状と粗さ測定を1台2役でこなせる。
リバースエンジニアリングに活用
近年、製造業で導入が進んでいる3Dプリンターは、3Dデータに基づいて立体物を造形します。3Dプリンターがあっても3Dデータがなければ造形をすることはできません。
3Dデータがなくても現物がある場合は、非接触式三次元測定器を用いてリバースエンジニアリングに活用する方法があります。非接触式三次元測定器で測定したデータから3Dデータを作成し、さらに3D CADを用いて再設計することで、3Dプリンターで造形をすることが可能となります。
ただし、非接触式三次元測定器は光やレーザーが当たる表面形状部分を測定するため、ガラスなどの透明体や鏡などの鏡面反射体は測定が困難です。
このような場合は、対象物に表面処理(例:スプレー塗布や表面ブラスト処理など)することで測定できます。
三次元測定器の測定方式の種類と特徴
CMM(Coordinate Measuring Machine)
直訳すると「座標測定器」です。主に門型接触式三次元測定器を指し、高精度の座標点を取得して寸法を測定するのが特徴で、製造業の品質管理に使われています。プローブを用いた点測定のため、複雑形状や自由曲面のある測定物には不向きです。
アーム式
アーム式とは、複数の関節をもったアームを使って対象物を測定する方式です。複数の関節があることにより、動きの自由度が高く、測定作業を機動的に行えます。また従来の門型測定器に比べてコンパクトなので、持ち運びや設置の自由度も高いのが特徴です。
カメラ式
カメラ式とは、測定対象物に特徴パターンを投影し、投影されたパターンをカメラで撮像して三次元座標を取得、3Dデータ化する測定器です。各社によって投影パターンやカメラ台数が異なりますが、高精細なデータ測定と自動化の実現性が高いのが特徴です。
レーザートラッカー
レーザートラッカーとは、測定物に接触させたターゲット(反射鏡・リフレクター)などにレーザー光を照射し、反射したレーザー光を発光源に戻すことで、ターゲットの三次元座標を測定する方式です。
他の測定器に比べ、レーザートラッカーは飛行機のボディや大型設備部品など巨大な物体の測定に適しています。
CT
CTとは、Computed Tomographyの略で、「コンピュータ断層撮影」と訳され、X線などの放射線を用いて測定対象をスキャンし、その内部構造を画像化する方式です。
一般的にイメージしやすいのは健康診断などで使用される「医療用CT」です。体を傷つけることなく体内を観察することができます。また、製造業向けの「工業用CT」もあります。
鋳造製品や射出成形部品の場合、製造手法の都合で鋳巣や気泡ができることがあり、これらは不良品として取り除かなければなりません。このときに部品内部の測定が必要な為、「工業用CT」が使用されます。
従来の「工業用CT」は欠陥の有無を確認するための観察用途で使用されていましたが、近年「工業計測用CT」が増えています。欠陥有無の確認だけでなく、その欠陥の寸法や体積評価、さらに表面処理を必要としていた透明物(例:医療機器など)の測定としても使用されています。
非接触三次元測定器と3Dスキャナーとの違い
3Dスキャナーは非接触式三次元測定器よりも精度が低く、大きなものを短時間で取り込めるのが特徴です。一方で非接触三次元測定器は、小さいものや大きなものの一部分を測定することに向いています。
スピードに関しては、3Dスキャナーのほうが速く取り込むことができます。非接触三次元測定器もスピードアップしたものが続々と登場していますが、分解能や判定範囲によっては測定スピードが遅くなってしまいます。
精度の高さなら非接触三次元測定器、スピードの速さなら3Dスキャナーと考えると、区別しやすいです。大きくても測定したい範囲が狭かったり対象物が小さかったり細かかったりする場合は、非接触三次元測定器が適しています。一方で、測定範囲が大きかったり公差が広かったりすると、3Dスキャナーの方が適しています。
非接触式三次元測定器の利用業界
自動車業界
自動車業界では、複雑な骨格部品やエンジン部品、自由形状のある外板パネルやインテリア樹脂部品、さらに最近注目されているバッテリートレイや電気モーター部品など、数多くの部品に非接触三次元測定器が活用されています。
航空機業界
航空機業界では、超大型の飛行機ボディや航空機エンジン部品で使用されています。特に航空機エンジンの翼部品(ファンブレード、タービンブレード、コンプレッサーブレード、ブリスクなど)は、翼形状全体を測定することで従来接触式測定器では発見できなかった不具合の早期発見や、翼形状の再設計による燃費効率の向上に貢献しています。この燃費効率の向上は発電業界(火力発電や原子力発電など)でも転用されています。
家電業界
家電業界では、新商品の市場投入を早くするために非接触式三次元測定器が利用されています。試作品の全体形状やその金型を測定して、試作工数の削減と量産最適化を図るための生産技術用途で活躍しています。
ワード技研で使用している最新式3次元測定器
ワード技研では、最新式のレーザー式非接触3D測定器『T-SCAN hawk 2』を導入しました。
『T-SCAN hawk 2』の特徴
①大きな物や重い物でも移動不要で、どんな環境でも現場で測定が可能
三脚やスタンドが必要な測定器の場合、足場が悪い所や障害物が多い現場では使用できないこともありますが、『T-SCAN hawk 2』は小型かつ軽量のハンディータイプですので、スタンドなどで固定せずに測定を行うことが可能です。
また、最大4メートルまでの大型対象物を測定するためのサテライトモード機能を搭載。ハイパースケールでのワンショットキャリブレーション機能で、1つの測定位置のみでセンサーの再キャリブレーションを素早く実行できますので、温度変化による精度の影響を受けません。
弊社では日本全国への出張測定を行っております。大きさや重量があるため移動が困難な物、機密性が高く社外に持ち出せない物などを測定したい場合、弊社の技術者が測定器を持って現場までお伺いします。
②光沢面・黒物が測定可能なブルーレーザー方式
従来のレッドレーザー式やカメラ式の3D測定器では、光沢面や黒物のスキャンには反射防止用スプレーの塗布が必要でしたが、『T-SCAN hawk 2』 は波長の短いブルーレーザーを採用しているため、光沢面や黒物もそのままで測定が可能。また、微小で複雑な形状の対象物も高解像度で測定できます。さらに、深いポケット・狭いエリア・手の届きにくい箇所の測定も実現可能です。
③精度の必要な箇所のみ高精細モードで測定
一般的な3D測定器で高精細モードによる測定を行う場合、一箇所だけでなく対象物全体を高精細モードで測定するので、データ容量が膨大になってしまうというデメリットがありました。『T-SCAN hawk 2』は、必要な箇所のみ高精細モードで測定し、それ以外は通常モードで測定して一つのデータにまとめることができますので、データ容量を大幅に軽減できます。
『T-SCAN hawk 2』の導入により、これまでは測定が困難だった対象物も手軽に測定できるようになりました。
測定のご用命・ご相談がございましたらぜひお気軽にお問い合わせください。
TEL. 042-775-7810
お電話受付時間 : 平日9:00~17:00
お問合せフォーム
https://word-g.com/contact/