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とまれずに


水面はみずから震えることはかなわず、じっと時をとめていた。十把一絡げの現象はその水面を動かせずに歯噛みした。

水面は時をつかさどっていた。雨が上がりの風もとまったその後に、みずからの静止によって物皆すらとめてしまった。

後悔と懐古の余韻にも飽きて、とうとう精神世界ですらもとまりそうになったとき、ひとつの心がとくんと鳴った。

失われていく熱に嘆いて声を荒げて、焦がれる思いと鼓動をひとつ投げうった。

「時がとまるかと思ったの」
「とまっていたよ。たしかにさ」
「ねえ、どういうこと?」
「どうということもないだろうさ。でも、せっかくならば二度ととまってほしくはないかな」

彼は知っていたからこそ、そんな言葉をつかった。知っていると伏せながら、それよりも大切な言葉を彼女に伝えるためにふれなかった。

「時はとまらなくていいものさ」
「そうかな、わたしは少しとまってほしいときもあるよ」

ほんの少し、彼はとまってほしくはないと願ってしまった。


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