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ほしにもねがいをば
「星を見ていきはしませんか?」
ふと、彼は彼女に声をかけた。顔も名前も知らないふたり、彼女は疑い早足で逃げようとした。
「すみません。見て欲しいのです。この街はもう、眠ってしまった。あなたしかいないのです、もう、歩き回っているのは」
訳のわからないことを語る彼に、彼女は怯えて必死になって走った。彼はその後ろ姿を追うことはせず、しかし最後の足掻きを見せる。
「北極星の周りを見てください。一頭青くて、一頭眩しい星がわたしです。どうか、看取ってくれやしませんか。どうか、あなたたちがわたしに名前をつけた責任を取ってくれませんか」
彼女はその声を聞いたのかはわからない。ただ、彼の大声は夜の道にひどく響いた。