がたりごとり
あの人は一体どこへいくのだろう。気難しそうにうつむきながら、こっくりこっくりと頭を揺らしている。あの人がどうしたって、わたしには関係ないのだけれど、それでもなんだか気になった。
「次は、○○。○○」
夢の中で何かをしながらもどこへいくかもわからず、ひたすらにこっくりこっくりと揺られている。
もし自宅の最寄駅を通り過ぎてしまっているのであれば、それからは帰ることができるのだろうか。
明日の朝を恐れるならば、起きなければいけないかもしれない。ただ、そんなくたくたに疲れた人を起こす人はいないのだ。薄情な世の中だ。
とはいえ、起こせばあの人が怒りかねない。一度はじまってしまうと、いくところまでいきかねない。なんと人を薄情にさせる世の中だろう。
でも、わたしも多分怒るかもしれない。正直なところ、十中八九怒るだろう。
「次は、○○。○○」
なんて、くだらないことを考えていたら降りなければならなくなった。願わくば、あの人が終電を逃してしまわぬように。わたしの暇つぶしに力を貸してくれたあの人が、あんまり割を食わないように。