![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/62672713/rectangle_large_type_2_9f241f85755c94da838dd1def54ea496.png?width=1200)
あまあしくれしぇんど
「ねえ、雨の演奏を聞きに行かない?」
あの人は思いつきでそんなことを言う。
ぼくはいつものことだから、ふたつ返事で行こうと伝えた。
今日は雨な分、普段よりはずっとやさしい。
「キラキラしている道路を探しに行こう」
「街路樹は大体何歩くらい間隔をあけているのか、ここの通りでたしかめてみよう」
なんかの、とにかく忍耐力が試されるようなものではないから。
「小雨っていいね」
「おだやかだしね。音はあるけど静かだし」
調子に乗って、ぼくたちは傘をさして外に出る。
あなどられていると思ったか、たちまち雨足は激しくなって傘が裏返ってしまった。
「ありゃあ、楽しくなっちゃったんだね」
彼女はびしょ濡れになっていることもお構いなしに、ぽつりとひとことつぶやいた。
ご清覧ありがとうございます。
よろしければこちらもどうぞ。