あまあしくれしぇんど
「ねえ、雨の演奏を聞きに行かない?」
あの人は思いつきでそんなことを言う。
ぼくはいつものことだから、ふたつ返事で行こうと伝えた。
今日は雨な分、普段よりはずっとやさしい。
「キラキラしている道路を探しに行こう」
「街路樹は大体何歩くらい間隔をあけているのか、ここの通りでたしかめてみよう」
なんかの、とにかく忍耐力が試されるようなものではないから。
「小雨っていいね」
「おだやかだしね。音はあるけど静かだし」
調子に乗って、ぼくたちは傘をさして外に出る。
あなどられていると思ったか、たちまち雨足は激しくなって傘が裏返ってしまった。
「ありゃあ、楽しくなっちゃったんだね」
彼女はびしょ濡れになっていることもお構いなしに、ぽつりとひとことつぶやいた。
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