桶、青、巾着に
桶の湯には青があり、浮かぶ巾着には金と緑の装飾が濡れてゆらゆらしている。巾着は膨らみ縮みを繰り返し、タコのように青を吐き出す。
日陰をつくる枝葉が揺れれば、木漏れ日が桶まで差し込み金がキラキラと輝いた。彼女は汗を垂らしながらも懸命に巾着を洗う。
「そろそろ諦めたらどうだ」
中年は背中越しに彼女に語りかける。彼女がその声に応えることはなく、ざぶざぶと巾着を膨らましては縮ませた。
「湯は作って置いてあるからな」
中年はそう言って後にする。執念と言ってもよかったが、中年は彼女に静かに同情を寄せた。